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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

突然のがん宣告、間違いだらけの初動対応…病院選びやお金、その後の人生を大きく左右

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
突然のがん宣告、間違いだらけの初動対応…病院選びやお金、その後の人生を大きく左右の画像1【図表1】がん告知後に考えるべきこと

 1981年以来、日本人の死亡原因の第1位であるがん。国立がん研究センターによると、2015年のがんで亡くなる人は37万人に上るという。

 今や国民の2人に1人ががんになるといわれているが、16年1月から全国がん登録がはじまり、さらに正確ながんの統計データが出てくると予想される。とはいえ、どこか他人事のような、ピンとこない人も多いのではないだろうか。そんなあなたが、ある日突然がんと宣告されたらどうすればよいのだろうか。

がん告知を受けたAさんの場合

 Aさん(52歳)は、会社の健康診断で前立腺がんの疑いありと言われ、紹介された大学病院で精密検査を受けたところ、前立腺がんと診断された。

 主治医に検査結果を聞きに行く日は、朝から緊張して付き添ってくれた妻(49歳)とも会話が弾まない。自分の名前が呼ばれ診察室に入っていくと、主治医は検査結果を見ながら、あっさりと「前立腺がんですね」と告げる。隣で聞いている妻も、動揺している様子が伝わってきた。そんなこちらの様子を斟酌することもなく、主治医の説明はよどみなく続く。

 とにかくAさんは、がんを告げられたことがショックで、医師の言葉が頭に入っていかない。「まさか自分が」という信じられない気持ちと「やっぱり」というような複雑な気持ちが交互に押し寄せてくる。さらに、これからの生活、仕事、家族のことなど、何をどうしたらいいのか、いろいろな感情や考えが頭の中を駆け巡るばかりだった。

がん告知でパニック状態になるのは当たり前

 
 Aさんのように初めてがんと知ったとき、多くの人は「頭の中が真っ白になった」と振り返る。事前に予想して覚悟を決めていたり知識や情報を持っていたりしても、動揺してパニック状態になるのは当たり前。逆に、辛いときや悲しいときに落ち込み感情が不安定になるのは、心身が健康な証拠だともいえる。

 通常、このような不安定な状態は1~2週間で徐々に落ち着くといわれているが、実際にはそんな時間的な余裕はない。Aさんのように、告知時点で主治医から今後の治療計画や入院等についての説明があり、これからどうしていくか決断しなければならない課題が山積みされているからだ。

がん告知を受けた後に考えるべき3つのこと

 
 がん告知を受けた後に考えるべきことは、(1)がんについて、(2)仕事・お金について、(3)家族・知人・友人・職場などについて、の3つに大別できる(図表1参照)。

 このうち最優先すべきは(1)である。どこの病院でどのような治療を受けるかが、今後の人生を左右するといっても過言ではない。そして、自分にとって最善の治療を選択するためには、いかに有益な情報を集めるかが重要なポイントだ。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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