子どもの教育費が世帯年収の約4割も…奨学金&教育ローン「貧乏」を防ぐ究極の活用術
ただし、影響の度合いは親子の収入と返済額・返済期間で異なる。注意すべきは、住宅ローンの存在だ。この年代の親は、半数近くが住宅ローンを抱えており、年収に占める住宅ローン返済額と在学費用の合計額は約3割という調査結果もある(出所:日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果<平成26年度>」)。
また、同公庫の調査によると、平成28年度の世帯年収に占める在学費用の割合は16.1%と前年(17.8%)より低下したものの、「年収200万円以上400万円未満」世帯の負担割合は36.6%と高止まりの状況だ。
親の年収や家計の状況によっては、さらに教育ローン負担を抱える余裕がないケースもあるだろう。
また、子どもの収入等について融資を受ける時点で予測するのは難しい。とはいえ、奨学金で前述したように、返済額が手取り収入の何%で、どれくらいの期間続くのかなど具体的に試算し、負担感を“見える化”することが重要だ。
その上で、教育ローンと奨学金のいずれを利用するか親子でよく話し合ってみよう。
「子どもに先のお金のことなどわからないだろうし、可哀そうでは?」などと考えなくてもよい。
18歳といえば、今や選挙権を有する年齢である。親の‘懐具合’を知り、自分がどう行動すべきか、できることは何かを考える良い機会になるのではと思う。
(5)民間教育ローンを利用する
教育ローンには、民間金融機関が実施するものもある。(4)の国の教育ローンを利用する場合、子どもの人数によって世帯年収の要件がある。
たとえば、子ども1人の場合、給与所得者であれば790万円以内。事業所得者であれば590万円以内となる。
世帯年収の上限額を超えている場合、勤続年数や居住年数が短い、自宅外通学や単身赴任である、介護費や医療費の負担が多いなどの要件を満たせば、上限が緩和される措置が設けられているが、それでも審査に通らない可能性もあるだろう。
また、国の教育ローンは手続きが煩雑で審査に2週間以上はかかる。
要件に合わない場合や時間的余裕がない場合など、民間教育ローンの利用も視野に入れておく必要がある。
民間の教育ローンは、メガバンクや地銀、信金・信組、労働金庫、JAなど、さまざまな金融機関で取り扱っている。一般的には国の教育ローンに比べて審査が早く、所得制限などもない点で借りやすい。
融資可能額は国の教育ローンより高額で、返済期間は10~20年。固定金利と変動金利が選べる金融機関もあるが、変動金利が多い。たとえば、千葉銀行の「スーパー教育ローン<学生生活>」は、変動金利で2.40%(一律0.2%の金利優遇あり)、融資金額10~3000万円、返済期間1~16年6カ月(6カ月単位)となっている(平成29年3月1日現在)。
金利等を考慮すると、国の教育ローンを優先させたいところだが、多くの金融機関では金利優遇キャンペーンを実施しており、付加価値を付けた教育ローンを提供するところもある。
たとえば、福岡銀行や熊本銀行、筑波銀行、千葉興業銀行などでは、教育ローンにがん団信が付帯している。
住宅ローン利用時に加入する団信と同じく、「死亡・高度障害となった場合、またはがんと診断された場合、その時点のローン残高が0円となる」しくみだ。
上乗せ金利は、福岡銀行と熊本銀行が+0.3%、筑波銀行と千葉興業銀行が+0.2%となっている。さらに、千葉興業銀行については住宅ローン利用者であれば金利上乗せなしで加入できる。
多額なローンを抱えながら、さらに生活費や治療費を捻出するのはがん患者によって大きな負担となる。がん患者とそのご家族にとって、それがなくなるというのは“ありがたい”の一言に尽きる。
以上、(1)~(5)まで、それぞれの方法を紹介したが、いかがだろうか?
もちろん、教育資金はあらかじめ準備しておくに越したことはない。しかし、子だくさんの場合や入学年度が続く場合、想定外の進学コースになった場合など、資金繰りに苦労するケースも少なくない。利用するかどうかは別にして、イザという時に慌てないよう、さまざまな準備方法とポイントを知っておくことも大切だ。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)