ですから、不動産会社や住宅メーカーなどの駆け込み需要への誘導に踊らされることはないのです。むしろ、それを横目で見ながら、その後の反動減を待ってから買っても遅くありません。
いってみれば、これから予想される駆け込み需要時期、18年から19年当初にかけては、売手優位の売手市場ですが、19年4月以降の実質的な消費税引き上げ後は買手優位の買手市場に購入環境が大きく転換します。売手市場の段階では、買手が多いので売手側の態度は横柄で、物件の選択肢は狭く、価格交渉などにも応じてもらえません。反対に、買手市場では売手は買手の意向を斟酌せざるを得ず、物件選択肢は豊富で価格交渉などの余地も大きくなります。はるかにいい買い物ができる可能性が高いのです。
駆け込み需要でも着工戸数の増加は期待できず
しかも、住宅業界にとっては今回の消費税引き上げ前の駆け込み需要にも限度があるとみられています。図表3は、大手住宅メーカーの団体である住宅生産団体連合会が、会員企業の経営者に対するアンケート調査から、17年度、18年度の新設住宅着工戸数の予測に関する調査結果をまとめたものです。
駆け込み需要が始まると期待されている18年度の着工戸数の予測の平均は94.7万戸で、17年度の予測より0.1万戸の減少となっています。駆け込み需要で着工戸数が増えるどころか、横ばいまたは若干の減少とする経営者が多いのです。
先にみたように、14年の消費税引き上げ時には前年の13年には1割近く着工数が増えました。それすら、現状では期待できないということです。つまり、駆け込み需要を折り込んでもいいところ横ばいとせざるを得ないほど、現在の住宅市場は閉塞感が強まっているわけです。景気拡大といいながらなかなか収入は増えず、その一方で人口の減少、世帯数の減少見込み、そして空き家の増加などの現実もあります。しかも、国の住宅行政も新築一辺倒ではなく、中古住宅やリフォームの促進に舵を切っています。
年間80万戸割れで大幅な価格下落の可能性も
社会的にも新築住宅市場は先細りにならざるを得ません。そんな時期に消費税増税後の反動減が発生すれば、これまでの増税時以上の反動減になる恐れもあります。19年度の年間着工戸数の90万戸割れは間違いありません。それどころか、08年のリーマンショック後のような80万戸割れもあり得るのではないでしょうか。
そうなれば、当然のことながら価格も大幅に下落するはずです。簡単には売れないため、買手にとっての選択肢も増えます。そこが大きなチャンスになるはずです。
もちろん、そんな事情はあっても、いますぐ買わなければならない人もいるでしょう。たとえば、希望エリアが限られているので、いま買わないと二度と希望の物件が出てこないかもといった事情のある人もいるかもしれません。さらに、現在の超低金利はそう長くは続かない、早めに買っておいたほうが得策と考える人もいるでしょう。
置かれた環境、思いはそれぞれでしょうが、ジックリ腰を据えて市場動向を見極めながら行動するのもひとつの考え方かもしれません。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)