私は東京23区と川崎市のほとんど、さいたま市浦和区で市場に供給される新築マンションの現場をすべて見て回っている。このように現地を調査した新築マンションの資産価値を分析するレポートを作成して、ネット上で有料頒布。エリア別に作成されたレポートの各タイトルは、だいたい3カ月で最新情報に更新している。
新築マンション市場は2013年から上向き始め、2014年10月の異次元金融緩和第2弾(黒田バズーガ2)以来、局地バブルといっていい状態である。東京の都心とその周辺、城南、川崎市と京都市の一部における新築マンションの価格が異様に高騰したのだ。今はその影響が都心近郊にまで及んでいる。中古マンションも新築の価格に引きずられて表面上は高騰しているが、売買が成立しにくくなっている。
一方、マンションの価格が高騰することによる市場の不自然な歪みも生じている。最近、私が感じているのは「実需の頭打ち」現象だ。
黒田バズーガ2以後、2015年と2016年の都心マンション市場は、いわばバブルが熱狂するさなかにあった。特に外国人の爆買いや相続税対策のタワーマンション購入が際立っていた。都心や湾岸エリアで販売されたタワーマンションが、高値にもかかわらず次々と完売したのだ。
そういった市場の熱狂は、投資や投機による需要によって形成されていた。実際に住むために購入していたのは、全体の半分もなかったと私は推測している。現に今年になって竣工した都心エリアの某タワーマンションでは、夜になって明かりがともっている住戸は常に全体の3割に満たないという。
中古マンション市場を見ると、そのタワーマンションからは大量の売り物件が出ている。だいたい新築価格の1割から2割高い水準で売り出されている。ただし、成約事例は極めて少ない。
現在、そういった新築未入居のタワーマンションを投機や投資で購入する需要はほとんど見られない。ごく少数の実需層が購入を検討している状態。彼らとて「高すぎて買えない」と考えている。私のところにマンション購入の相談にやってくる人々の事情などを伺っていると、そういった売りと買いの膠着状態が見えてくる。実需層が買えない状況なのだ。
実需の頭打ち
最近の新築マンション市場における価格の相場観も歪になってきた。
東京都港区における新築マンション価格は、2014年以前は床面積の坪単価にして300万円台から400万円台が普通。好立地の高級仕様物件が500万円台から600万円台だった。今は安いものでも400万円台。600万円あたりが普通で、高い物件は1000万円を窺ったりしている。文京区では2014年以前は300万円台が基本。高くても400万円台だった。