元国税局職員、さんきゅう倉田です。税務調査で社長が持っていて嫌だったものは「ワルサー」です。
税金は、その時代の背景や経済を反映したものが多く、ひいては税務調査も時代によって移り変わってゆきます。消費税の導入によって廃止されましたが、かつて日本には「物品税」という税金がありました。基本的に、奢侈品にかけられる税金です。手元に資料が少ないため、おそらくですが、酒税のように製造・移出すると賦課されたと考えられます。つまり、その税が販売価格に転嫁され、エンドユーザーが負担することになる間接税です。
物品税も消費税や法人税と同じく国税なので、税務署や国税局が税務調査を行っていました。今回は、物品税の課税対象だった「猟銃」の製造を行っていた納税者への税務調査事例を紹介します。
法人の役員Aは、猟銃の製造販売を行い、それを銃砲店に販売していました。物品税法では、毎月、猟銃の製造数と価格を税務署に申告するよう定められていました。その申告により、税務署は物品税の課税額を把握し、税金を納めてもらうことになります。しかし、Aはこの毎月の申告を怠っていました。いわゆる「無申告」です。
そうすると、猟銃の製造販売業であることは税務署に補足されているので、「なぜ申告しないのか。本当に製造数が0なのだろうか」と調査官は疑問に思います。店舗や事務所などを確認しに行った可能性もあります。あるいは、取引しているであろう銃砲店に反面調査を行い、証拠を固めたかもしれません。
兎にも角にも、正式にAに対して税務調査が行われることになりました。調査の連絡をし、本店所在地に臨場したところ、提示された帳簿には猟銃の販売記録がありませんでした。それどころか、猟銃の販売を示すような納品書や領収証の控えもありません。すべて破棄していたのです。一般的に行われる売上除外と同じ方法です。しかし、計画的に売上除外をする人々というのは、自分だけのために記録を残したがるもので、Aも猟銃の取引記録を書いたメモを持っていました。これは、調査官の粘り強い調査によって、白日の下にさらされます。