――不動産がからむと、人間の醜い部分が露呈しますね。
川口 不動産はいくらで売れるのかが明確でないからです。たとえば、長男が「1億円で買います」という業者を見つけてきても、次男が「本当は1億2000万円で売れるのに、2000万円を着服しようとしているのではないか」と疑心暗鬼になれば、トラブルの火種になります。このような事例は地方でも都心でもありますが、地方では相続人同士で押し付け合いになり、不動産が宙に浮く場合もあります。そうしたときは本センターが間に入ります。
田中 最近では、親の介護の問題もからみます。たとえば、長男夫婦が最後まで介護をして看取った場合、「遺産を余分にもらう権利がある」と主張するケースがあり、きょうだい全員がそれぞれ弁護士を立てて泥沼になってしまうこともあります。私は青森県三沢市の出身ですが、引き取り手のない物件はたくさんありますね。感覚的には30~40%は空き家ではないでしょうか。
「かぼちゃの馬車」だけじゃない投資トラブル
――また、今は不動産投資に関するトラブルも急増しています。
田中 社会問題に発展した「かぼちゃの馬車」の問題ではスルガ銀行のずさんな融資が明らかになり、運営元のスマートデイズが破産しました。同社に触発されて多くのシェアハウス運営会社ができており、オーナーとの間でトラブルになっているのです。「『儲かる』『節税対策になる』という謳い文句で投資用不動産を購入したものの、利益がない状態」「空室で赤字が続き、持ち出しの費用のほうが家賃収入よりも多い状態が慢性化している」といった相談が寄せられています。
そもそもシェアハウスは家賃設定が高いのですが、その高い家賃収入を保証していた運営元が破綻してしまうため、オーナーは非常に困ってしまいます。また、たとえば1億円の物件を購入する場合は2000万円の頭金が必要で、残りの8割は銀行から借り入れます。仮に収入が月100万円の場合、支払い額が月50~60万円になると危険水域なのですが、スルガ銀行の融資では月の収入の80%を支払いに回すケースもあったようです。「頭金なしでもアパートやシェアハウスの経営ができる」と信じて、オーナー自身も書類やデータの改ざんに協力したケースがあります。そのため、銀行を相手に訴訟をしても解決は難しいでしょう。