(「Wikipedia」より)
今回の新指数算出開始のインパクトは大きい。およそ120兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、14年度にも新指数に連動させるかたちで運用を開始するとみられているからだ。報道などを総合すると、新指数での運用額は当初数千億円規模で、その後数兆円規模にまで拡大させる見込み。指数開発の記者会見で、JPXの斉藤惇CEOは「GPIFを訪問して丁寧に説明したい」などと述べ、積極的に利用を促す考えを示している。
大手調査機関によれば、公的年金だけで国内株のパッシブ運用は13 年3月末時点で18.5兆円と推計される。その他の厚生年金基金や確定給付型年金を含めれば20兆円を大きく上回るとみられる。保守的な運用を行うパッシブの大多数はTOPIX(東証株価指数)を基準としている。TOPIXは東証1部市場に上場する全銘柄(約1700社)の値動きを反映する指数だ。こうした資金の一部が、新指数への移行するとなれば影響は少なくない。
時価総額の大きさにもかかわらず、今回“落選”した企業には、パナソニックや任天堂などがある。新指数の基準には3年平均のROEや3年累計の営業利益といった項目があり、過去に業績不振だったことが不採用の要因になったとみられている。一方、東証1部以外から採用されるのはネット通販大手の楽天、スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)がヒットしているガンホー・オンライン・エンターテイメント、日本マクドナルドなど。1部市場の落選銘柄から年金の資金が流出し、新興市場の採用銘柄に流入する動きが予想される。
●ROE重視の経営が広がるか
市場では「今後は、企業経営者のROEに対する意識が高まるのではないか」(大手証券)との期待感も浮上している。外資系証券によれば「欧米市場のROEはおおむね15%程度に対し、日本は5%程度にとどまっている」という。新指数に採用されることが、外国人投資家も含めた投資家の関心を高めることになる。
そのため、今回の新指数非採用企業が、ROEを高めるための経営努力をこれまで以上に行なう可能性が大きい。国内企業のROEは海外企業に比べて低いことが、国内株式市場低迷の一因ともみられてきた。今回の新指数導入が市場の活性化につながる可能性もあり、中長期的なポイントになりそうだ。
一方、国内の運用機関の中には「トラックレコード(過去の収益実績)がない指数をベンチマーク(投資基準)として使うことに対する抵抗感がある」といった声もある。バックテスト(事前のテスト)においての運用では新指数は順調だったものの、短期的には実際にTOPIXを上回る成績が残せるのかにも関心が高まることになりそうだ。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI 記者)