人気の理由は決算の回数にある。普通の投資信託は年に1回決算を行うのに対して、毎月分配型投資信託の決算は12回。つまり、毎月分配金が受け取れるのである。多くの人は定期的にお金が入ってくるので家計の足しにもなり、安心感があると思っているのではないだろうか。
しかし、実は分配のたびに課税されるため、税制的にはかえって不利なのだ。それに、運用は利益を元本に上乗せして資産を増やしていくもの。利益を毎月差し引いてしまっては複利効果が薄くなってしまう。分配金を受け取れば、その分基準価格は下がることになる。
それでも毎月分配型投資信託が魅力的に見えてしまうのは、人間心理をうまく突いているところにあるようだ。人は遠い将来の大きな利益より、目先の小さな利益を重視してしまう傾向があるという。
例えば「1週間後に1000円もらえる」と「1年後に1300円もらえる」という選択肢があった場合、大半が1000円を選ぶらしい。利益は小さくても、すぐに手に入るほうが満足感を高めるわけだ。毎月配分型投資信託は、まさにこの心理にマッチしているといえるのである。
●分配金は運用の収益から出ているとは限らない
もうひとつ、毎月分配型投資信託で誤解しがちなのが、分配金は運用の利益から出ていると思い込んでいることだ。もちろん、運用がいい時期には利益から配分されるとはいえ、いつも利益が出ているとは限らない。特に、リーマン・ショックや欧州危機の影響で、運用がかなり落ち込んでいるのが現実だ。実際、毎月分配型投資信託の代表格である「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は2008年には純資産額が5兆円を超えるファンドになったが、数々の危機で資金が流出し、現在では2兆円を割っているのである。
そして、利益が出ない場合は元本を取り崩して分配金が支払われる。投資信託は法律で定められている枠内ならば、期間収益を超えて配分することが認められているのだ。つまり、投資した元本が少しずつ払い戻されているだけというわけである。
こうした元本からの配分を「特別分配金」、収益からの配分を「普通分配金」と呼ぶ。分配金がどちらなのかを見分けるには、金融機関から送られてくる通知書を確認するといい。「普通分配金」は源泉徴収されているので、10%の税金が引かれているはずだ。一方、「特別分配金」は元本からの払い戻しであるため、非課税になっている。
しかし、その分配金も枯渇してきて減配を余儀なくされる商品が増えてきた。昨年の「日経ヴェリタス」によれば、この1年で100本強の商品が減配になっているという。
せっかく大枚を投入しても、これでは何の得にもならない。投資信託は十分に検討してから購入しないと、資産を膨らます手段にはなりえないのである。
(文=長尾義弘/フィナンシャル・プランナー)