ビジネスジャーナル > マネーニュース > 教育・住宅資金の一括贈与の罠?  > 2ページ目
NEW

教育・住宅資金の一括贈与の罠?祖父母は生活困窮、子・孫は分不相応な出費で家計逼迫

文=畠中雅子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会
【この記事のキーワード】, , ,

 また妊娠出産に関しても、公的サポートは充実してきており、高額な費用は必要なくなった。例えば、妊婦健診は全国どの自治体でも14回分の助成が受けられる上、別の補助制度を備えている自治体も少なくない。出産に関しても、健康保険から病院へ出産育児一時金を支払ってもらえる「直接支払制度」が主流になっているため、妊娠期から出産にかけての自己負担額は10万円に満たないのが一般的だ。妊娠・出産費用は、各種の助成が拡充したことで負担はかなり軽くなっており、親から多額の助成を受ける必要があるとはいいにくい。

●援助によって生活が壊れることも

 教育資金を一括贈与で援助してもらった若い夫婦が、別のところでお金を使ってもらおうという狙いなのだろうが、これらの制度にはライフプランの視点から2つの問題がある。

 一つは、贈与した祖父母が年を取った時に、資金不足に陥るかもしれないリスク。相続税対策が必要な資産家が、この制度を利用して相続資産の減少を目指すのは合理的な選択だ。しかし、金融資産が5000万円以下の家庭で、1000万円を超えるような援助をしてしまうと、自分たちが後期高齢者になる頃になって、「子や孫にやりすぎた」と後悔するケースも出てくるはずだ。

 一方の子ども側を見ても、分不相応な習い事や塾代を掛けているケースが目に付くようになった。「教育資金としてお金をもらったから、使い切らなくてはいけない」と考えている人もいるが、使い切るという感覚には疑問を感じる。

 また、子どもが小さく家計が楽な時に財布の紐を緩めることにもなりかねない。自分たちの収入に見合わないほど多くの教育費をかけてしまった場合、将来の家計にとって重荷となる可能性がある。自分たちの収入では私立学校に子どもを入学させることが難しいのに、祖父母の援助を受けて進学しても周囲との生活レベルの差は大きく、次第に息苦しくなるだろう。また、無理して塾に通わせるなど教育資金を底上げしてしまうと、自分たちの老後資金を貯められないリスクも出てくるはずだ。

 もう一つは、格差の問題。裕福な親や祖父母を持つ恵まれた家庭も確かにあるが、老後の生活設計の相談現場では、親の懐事情は厳しさを増している。「自分たちの老後すらおぼつかない高齢者世帯」と、「相続対策の一環として、余裕部分を下の世代に継承していきたいと考える高齢者世帯」との格差が固定化されてしまう可能性も、これらの制度は秘めている。
(文=畠中雅子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会)

教育・住宅資金の一括贈与の罠?祖父母は生活困窮、子・孫は分不相応な出費で家計逼迫のページです。ビジネスジャーナルは、マネー、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!