そして、この保険に加入しても、医療保険で給付金を受け取るように恩恵を受けられる可能性は極めて低い。とにかく、保険金支給要件に該当するハードルは高く、基本的に「いかなる職種にも就けないこと」が要件となる。しかし、そんな費用対効果論は些末な問題なのだと言いたい。絶体絶命の窮地から家計を立て直す術が、保険本来の役割なのだ。「もらえればラッキー」な保険とは、根本的に異質な問題であることを考えてほしい。
老後の最大の恐怖は、“介護費用”
現役でも老後でも、「看過できないほどの高額支出の発生」に備えるべきである。その筆頭が、高額な損害賠償責任を負う場合への備えだ。具体的に、火災保険等に特約で付帯する「個人賠償責任保険」は、生涯で一瞬たりとも切らすべきではないと断言できる。賃借人であるなら借家人賠償責任保険、車を運転するなら自動車保険(対人・対物賠償保険)も同様だ。これらは保険本来の機能を最も合理的に有し、加入するか否かの議論をする以前の問題である。
これに次ぐマストな保険が、資産損害(買い換え費用)を補てんする火災保険や車両保険、そして介護保険である。今回はこのうち高齢期の介護保険を特筆したい。背景に、介護費用の実態として公的介護保険制度の適用対象外の費用が意外にも甚大であること、要介護期間の長期化等もあり、老後の生活不安の根幹は介護費用やそれに関わる終の棲家の費用の問題にも集約できる。そして、ともあれ我々より遥かに多い情報量を持つ保険会社のセールス戦略がすべてを物語っている。医療保険をアピールしてきた保険は枚挙に暇がないが、介護保険はどうであろうか。そう、所得補償保険と同じく、保険会社にとって損害率が芳しくない部類の一角が介護保険なのだ。つまり、保険会社が積極的にPRしたがらない保険こそ注目すべきと述べておきたい。
だが、保険のカテゴリーはまったく異なるが、リスクの観点から考えると、現役中の介護保障は就業不能補償とおおむねカブる。よって、所得補償保険に加入していれば、介護保障は就業終了後に考えても決して遅くはない。むしろそれが効率的でもある。
昨今では、保険会社各社が国内での契約シェアを伸ばすため、最後のテリトリーともいえる介護分野に触手を拡げ、魅力的とも映る商品や特約を相次いで打ち出している。これまでも斬新な商品戦略を打ち出してきた保険会社の、この春以降の新規特約には目を見張るものがある。介護に関する保障商品はこれまでまったくないに等しいお粗末なものであったが、ようやく検討に値する内容が登場してきた。これから、じっくり吟味してほしい。