東京都の小池百合子都知事にまたもや「学歴詐称」疑惑が浮上し、6月27日に閉幕した都議会の第2回定例会でも取り上げられた。小池氏の学歴問題は、2016年の都知事選の際にも疑惑が取りざたされた。
同氏初の自著『振り袖、ピラミッドを登る』(講談社)の経歴欄に、「1976年10月、女性では初めてカイロ大学を首席で卒業」と記載されていることが事実か否かを問うものだが、月刊誌「文藝春秋」(文藝春秋/7月号)において、カイロ留学時代の同居女性が、「小池さんは実際にはカイロ大学を卒業していません」と証言したのである。
ノンフィクション作家・石井妙子氏による月刊誌のレポートは緻密だ。この女性は、50年近く前にメモした手帳や日本に送った大量の手紙を今も保存していて、当時のことが詳細に書いてあるという。
この女性によれば、小池氏はカイロ留学中、アラビア語をほとんど話すことなく、カイロ大入学も当時のエジプト閣僚のコネ。卒業については、1976年のサダト大統領夫人の来日時に日本に一時帰国した際、アテンド役を務めたことが関係しているという。新聞記事に「カイロ大学を卒業した小池百合子さん」と顔写真付きで紹介され、カイロに戻った小池は、この記事を女性に見せた。「カイロ大卒業」という“あり得ない”経歴に驚いた女性が、「そういうことにしちゃったの?」と聞くと、小池氏は「うん」と答えたという。
この件について、小池氏は都議会の代表質問で野党の自民党から質問されると、「正式なカイロ大の卒業証書と卒業証明書を有している。大学側もこの卒業を認めている」と反論。もっとも、「首席で卒業」については、「当時の担当教授の言葉をうのみにした。うれしくなって、その旨を記述した」と語り、お茶を濁した。「首席」が虚偽である可能性は高い。
ただ、都議会での自民党の追及もここまでで、深追いはなかった。
そのため、都議会関係者の間では「小池知事の任期は2年後の2020年7月30日まで。東京五輪を自分の手で開くには、都知事に再選されるしかない。弱みのできた小池知事に対し、『再選したいなら、俺たちの言うことを聞け』という自民党からのメッセージではないか」との深読みが始まっている。
自民党に“スリ寄る”動き
自らが立ち上げた国政政党「希望の党」は事実上、消滅し、支持母体となる都議会の「都民ファーストの会」も1回生が多く、頼りにならない。つまり、東京五輪を仕切るためには自民党に接近せざるを得ない。
実際、すでに小池氏は自民党にジワジワと“スリ寄る”動きを見せている。
小池氏は5月16日、自民党本部を電撃訪問し、二階俊博幹事長と会談。2020年夏の都知事選が五輪開催中とならないよう、前倒し実施の協力を求めたという。翌17日には、日本自動車工業会の定時総会後の懇親会に出席。そこで、自民党の伊藤達也元金融相と談笑する姿が目撃されている。
二階氏は小池氏にとって、共に自民党へ移った保守党時代からの仲間。一方、伊藤氏は小池氏が政界に進出した最初の政党である日本新党の仲間で、現在は小池氏と近いとされる石破茂元幹事長のグループに所属する。
小池氏は二階氏や石破氏に接近し、自民党の支援を得て都知事再選を狙うのだろうか。徹底的に対立してきた都議会自民党との関係修復は容易ではないが、前出の都議会関係者はこう分析する。
「老獪な自民党のこと。自分たちの手のひらで踊ってくれるなら、小池さんでも構わないんじゃないか。与党に戻って、都政を牛耳れるわけだから」
海千山千の猛者たちによる水面下での駆け引きが行われている。
(文=編集部)