このたび、西日本豪雨で犠牲となられた皆様に深く哀悼の意を表すとともに、被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。
気象庁が「平成30年7月豪雨」と命名した西日本豪雨は、死者200名、行方不明者21名(7月12日時点、政府発表)におよぶ大災害となった。これでまた、消費増税を延期する環境ができてしまった。
2014年11月、消費増税延期を最初に決定した際、安倍晋三首相は「再延期はない」「リーマン・ショックや11年3月の東日本大震災のような重大な事態が起きない限り、予定通り引き上げる」と言っていたが、16年6月1日の記者会見で「消費低迷」を理由に増税を再延期した。
この決定を下した約1カ月半前の4月14日に、死者が267名に上る熊本地震が起きている。安倍首相は記者会見で「延期の理由が地震だ」とは明言していないが、九州経済に与える悪影響については言及している。
19年10月の増税をするかどうかの判断は、少なくとも1年前の今年10月までがタイムリミットといえる。しかし、その最終判断をする前に、今回またしても大災害が起きてしまった。
西日本豪雨の被害地域は熊本地震よりはるかに広く、災害規模が熊本地震より小さいとはいえない。西日本豪雨の前には、大阪北部地震も起きている。今後、西日本経済に与える影響は少なくないはずだ。
それにしても、安倍首相が増税の判断をする前には、必ず大災害が起きているのは、なぜだろう(表1)。もちろん偶然の一致だが、最初の延期を決定した3カ月前にも、豪雨災害が起きている。今回大きな被害があった広島県を中心に起きた豪雨災害だ。
第2次安倍政権では、大災害が頻発している。文末の表2を見ていただきたい。気象庁が名前を定めた災害が、2014年以降毎年起きている。安倍政権は今までに5回(死者・行方不明者合計629名)、同じように長期政権だった小泉政権時代は6回(同273名)起きているが、犠牲者の数は安倍政権のほうが圧倒的に多い。災害の多さという意味では、安倍政権は「呪われた政権」ともいえるのかもしれない。
もちろん、政権と天災とは一切関係がないことはわかっているが、何か安倍政権と災害とは奇妙な因縁があるのではないかと疑いたくなってしまう。
災害は起きてほしくないが、災害特需に潤う企業があることも事実だ。すでに予備費20億円が、西日本豪雨災害の復興に投入されることが決まっている。被災地域では、公共事業も増えるだろう。建築・土木関係だけでなく、食料品や車、家具、家電などの生活用品関連業界も、多かれ少なかれ災害特需となるはずだ。
9月の自民党総裁選挙で再度、安倍首相が選ばれれば、歴代第1位の長期政権となることは間違いないだろう。誰が首相になろうとも災害は起きるだろうが、もしあと3年、安倍政権が続くことになれば、なんとも落ち着かない気分になってしまうのは、私だけではないだろう。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)