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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第9回

苦境マック、好調スタバ、何が明暗分けた?復活策を探る 価格を買う顧客を集めた副作用

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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 例えば、スターバックスが4月16日から期間限定で発売したバナナフラペチーノは、生のバナナをまるごと使用した価値ある一品ですが、価格もトールサイズで610円とカフェで販売する商品としては高額の部類に入ります。一見、「そんな高い商品が売れるのか?」と思われがちですが、発売を開始するやいなや話題が沸騰し、予想を上回る売り上げに各店舗で完売が続き、5月11日の販売終了予定日を待たずして早々に販売終了になりました。

 スターバックスの場合は、ただ単なるコーヒーの販売をビジネスの主軸にするのではなく、自宅や職場に次ぐ「サードプレイス」というコンセプトを提案し、落ち着いた環境でスペシャリティコーヒーを飲むという「体験価値」を顧客に提供することを標榜しているところに特徴があります。このようなスターバックスの提供する価値に魅了された顧客は、価格に左右されることなく「スターバックス」というブランドを愛し、スターバックスが高い価値を提供し続ける限りは顧客であり続けます。

 スターバックスの好業績の背景には、このような価値を重視する顧客がひとり、またひとりと積み重なって顧客基盤が拡大していくという背景があるのです。

●価格から価値への転換を図り、復活を遂げたリンガーハット

 このようにビジネスでは価格を売るか、価値を売るかで、集まる顧客の特徴が変わり、事業に大きな影響を与えますが、ビジネスの軸を価格から価値に転換して成功した興味深い事例もあります。

 それが、長崎ちゃんぽんのチェーン店を全国で展開するリンガーハットです。

 リンガーハットは05年、創業者である米濱和英氏が会長に退いて、後任にマクドナルドで社長を務めた八木康行氏を招聘し、会社の未来を託します。八木氏はマクドナルドで培ったノウハウでリンガーハットを成長軌道に乗せようと数々の改革に取り組みます。

 そのうちの一つがクーポンの発行でした。八木氏は、マクドナルドの成功法則をリンガーハットに持ち込み、当時通常価格が450円だった長崎ちゃんぽんを100円引きの350円で食べられるクーポンを発行し、デフレ時代の低価格競争に勝ち抜こうと画策します。

 ところが、このクーポンの発行で一時期は客足が伸びたものの、価格だけではすぐに顧客に飽きられて業績は失速。09年2月期には最終赤字が24億円にまで達し、リンガーハットは倒産の危機に直面します。ここでマクドナルド出身の八木氏は引責辞任に追い込まれ、代わって創業者である米濱氏が社長を兼任し、経営の第一線に返り咲くことになります。

 米濱氏が業績を立て直すためにまず断行したのが、価格を売るクーポンの廃止でした。クーポンの乱発による「長崎ちゃんぽん=安物」という顧客の間に定着した悪いイメージを払拭し、価値を提供することを決断したのです。

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