■賢い住宅選びのコツとは?
本書では、不動産の資産としての側面の話がかなり踏み込んで語られているが、やはり多くの人にとって気になるのは、「住宅を選ぶときは、何に気をつければいいの?」ということだろう。
まずは、マンションの場合。
もっとも重要なのは「マンション全体の管理状態」だ。
専有部(居住部分)に限らず、外壁や屋上、玄関や廊下、階段やエレベーターなどの共用部を含めた全体といったハード面。そして、管理組合運営といったソフト面を意識することが大切だという。
マンション管理は管理会社がやってくれるもの、と思い込んでいる人が多いが、主体はあくまで所有者で構成する管理組合だ。
したがって、管理組合の議事録などを見せてもらい、組合がしっかりしているかを見極めることが必要だ。組合が機能していないと老朽化に気づかないままになり、いざ住んでみたら次々と不具合が発生する、などということにもなりかねない。
一戸建てで、まず気をつけたいのは「壁裏や天井裏」だという。
配管の不具合、断熱材の有無などの施工不良やミスがないかをしっかりと確認しておきたい。
さらに、「デザイナーズ住宅」も気をつけたい物件だ。
おしゃれな外観を追求した結果、機能性が損なわれ、「雨漏りしやすくなる」「省エネ性が悪い」「間取りが特殊で使いづらかったり、将来的に売りにくかったりする」などのデメリットが隠れていることがあるので注意したい。
近年、各地で地震が頻発しているので、耐震性が気になる人も多いだろう。
意外に思うかもしれないが、「木造住宅だから地震に弱い」というのは誤解なのだという。
耐震性を気にかけるなら、建物を構成する材料が「木」か「鉄」かではなく、「数値」を見るべきだと著者は述べる。
全国共通で建物の性能を表す「住宅性能表示」という物差しのような制度があり、耐震性はいくつかの等級で示される。
耐震性の基準で最高等級の「3」をとるには、建築基準法が定める1.5倍の耐力を有する必要があり、たとえ木造でもこの数値に問題がなければ、十分な耐震性を備えていると判断できるのだという。
ここで取り上げたポイントはごく一部だが、どんな住宅でも大切なのは、見た目や印象ではなく中身を把握するということだろう。