ビジネスパーソンとして上を目指そうとビジネス書や経済に関する本を読む人は多いだろう。
しかし、読書を単に知識や情報を得るだけのものと考えるのはもったいない。なぜなら、読書は、本の読み方次第で、思考力やモノの見方の幅といったビジネスパーソンにとって大切な基本的な能力を伸ばすこともできるからだ。
そんな「知識を増やす」だけの読書ではなく、「考える力」を身につけるための読書の方法を教えてくれる一冊が『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(西岡壱誠著、東洋経済新報社刊)だ。
本書では、5つのステップで「読解力」「論理的思考力」「要約力」「客観的思考力」「応用力」が身につく読書の方法が解説されている。
本書のユニークな点の一つは、それぞれのステップで「◯◯読み」という読み方が紹介されている点だ。その中から、実になる読書のための読み方をいくつかピックアップしよう。
■本を理解するベースづくりのための「装丁読み」
読書が苦手な人の中には「本の内容がなかなか頭に入ってこない」「読むのが遅い」と感じ、「自分には読解力がないのでは?」と悩んで、読書自体を断念してしまう人が多いのではないだろうか?
著者は、本屋や文章が読めない原因の9割は「準備不足」だからだと述べる。読書をする前の具体的な準備とは、「タイトルをちゃんと読む」「本のカバーや帯文をきちんと読む」ということだ。そして、そのためにやっておくとよいのが「装丁読み」だ。
ほとんどの本は装丁に多くの情報が詰め込まれている。その装丁に書かれているタイトル、コピー、文章を読むことで、「この本は何を伝えようとしているのか?」ということのヒントが得られ、自分がその本から何を学ぶのかという目的をはっきりさせるための「仮説」が立てられるという。
今から読む本がどういう本で、どこにゴールがあるのかを把握することは、暗い森の中で「ライト」と「地図」を持つようなものだ。
例えば、本書であれば、『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』というタイトルには、「読解力や地頭力を身に付ける方法」「東大生の読書の仕方」がわかる本だという「ヒント」がある。そして、いざこの本を読もうと思った時に、自分が何を得たいのかという目的を「仮説」としてつくることができるのだ。
仮説ができれば、その切り口を意識しながら能動的に本の内容を汲みとる読み進め方ができる。漫然と本に向き合うのではなく、準備をしてから読むことで、読む力や考える力が一層鍛えられるというわけだ。
■読んだ本から何を学んだのかを測る「要約読み」
読書における一番の落とし穴は「わかったような気になってしまう」ことだ。そうならないためにやっておくとよいのが。「要約読み」だ。
読んだ本の内容を、わかったような気になっているか、それともきちんと理解できたかは、「その本で著者が伝えたかったことを一言で言い表せるかどうか」で測ることができる。
具体的には、本の一節や一章ぶんを読み終えたところで、「要約的な一文」を探し、その一文を踏まえて一節、一章の内容を30文字にまとめる。もし、これがまとまらなければ、内容への理解が浅いということだ。この読み方を繰り返せば、情報を取捨選択し、重要な情報を察知する能力が高まるはずだ。
■考える力がつく「パラレル読み」
本は基本的に一人の著者による「意見の偏り」がある。その意見の偏りによる知識の狭まりを避け、多面的なモノの見方をする力を養うのに役立つのが、複数の本を同時に読む「パラレル読み」だ。
関連性のある二冊、ないしは、複数冊の本をなるべく同じペースで同時に読み進め、著者の主張の共通点や相違点を探る。こうすることで、客観的、かつ、複合的なモノの見方をする力が身につく。 一面的な正しさに縛られない広い視野は、ビジネスパーソンにとって大切な感覚だ。「パラレル読み」はその力を養ってくれる読書法なのだ。
■「選書」は、いっそのこと他人任せでいい?
日本で出版される本は年間8万点とも言われている。その中から自分に合った一冊を探すのは難しい。そこで重要になるのが「選書」の方法だ。
著者は、「選書は他人任せにしてもいい」と述べる。例えば、金融についての知識がまったくない人が、数ある入門書から適当に選ぶよりも、そのジャンルの本に精通している人に「どの本が私に合っていると思いますか?」と聞いてみる方が、良い本に巡り会える可能性は高い。
同じ量の本を読むのでも、読み方が違うだけで得られるものには差が出てくる。本書から、質の高い読書の方法を学んでみてはいかがだろうか。
(ライター/大村 佑介)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。