ごく一握りだが、ビジネスの現場では「極めて優秀な人」がいる。
営業をやらせれば成績はトップ。ただのトップではなく、ダントツで一位。そして成績がいいだけでなく、部署全体や会社全体を見渡す視座もある。
こういう人材は、普通の人とはそもそも見えている景色が違う。それをもたらすのは仕事への考え方であり、視点である。
『無言力 会話のない究極の力』(ダイヤモンド社刊)は、社長として上場企業であるジェイホールディングスを率いる上野真司氏が自身の仕事哲学を明かす一冊。かつては不動産営業マンとして圧倒的な成績を残し、経営者としても辣腕を振るう上野氏が仕事をするうえで大切にしているのはどんなことなのだろうか。
■苦手なことはやめる・嫌いなことはやらない
前述の通り、上野氏はかつて不動産の営業マンとして活躍していたが、特異なのは営業活動のほとんどを「メール」のみで行っていたことだ。
通常、営業マンであれば客先を訪問して商談をしたり、電話セールスをしたりと口頭でのコミュニケーションが圧倒的に多い。電話が嫌いだったという上野氏は、この方法をほとんどとらず、顧客と顔を会わせるのは契約締結日だけということも珍しくなかったという。
「営業は話してなんぼ」という気もするが、訪問営業も電話セールスも売上をあげるための手段でしかない。ゴールはあくまでも売上。口頭のコミュニケーションが苦手なら、他の方法を考えればいい。
大事なことは自分にとってのゴールを設定し、そこから逆算してできること、自分にやれることを明確にすること。そしてそれをとことん考え抜いて実行することなのだ。
■仕事で突き抜ける人が持つ「第4の目」
「仕事ができる人は言外のコミュニケーションに長けている」と上野氏は言う。
相手の発言内容からしか情報を読み取れない人は二流。場の空気や相手との距離感、立ち居振る舞い、あるいはメールの行間など、あらゆるところに観察を洞察の目を張り巡らせ、情報を得たりチャンスの芽を見つけるのが、仕事ができる人である。
そうした目を養うために大切にしたいのは「四つの目」だ。
自分から相手を見る目が「一つの目」、相手から自分がどう見えているのかを察知できるのが「二つの目」。ここまでは多くの人が身につけている。
しかし、自分と相手を一歩引いたところから見る第三者の目(三つの目)となると難しい。そして、その第三者の目をさらに一歩引いたところから見るのが「四つの目」である。
この「四つの目」は誰でも簡単に手に入れられるものではないし、常にできることでもないと上野氏は言う。しかし、視野を広くとり様々な角度から物事を眺めることで、他の人が気づかない部分に気づき、他の人が正しいと信じることの裏に何が潜んでいるかを察知できるようになるのは確かなこと。
少なくとも複数の視点から物事を眺める癖は、普段からつけておきたいところである。
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ここで紹介したことは上野氏の仕事哲学のごく一部。
本書で明かされる氏の仕事観や大事にしている考え方、物事の捉え方は、仕事で行き詰まりを感じている人、会社でくすぶっている人、自分はもっとできるはずだと思っている人、同僚から抜きん出たい人にとって大きな気づきを与えてくれるのではないか。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。