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「部下をほめて育てる」で逆効果…もう部下は昇給・出世を動機には頑張りません

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※画像はイメージ(新刊JPより)。
※画像はイメージ(新刊JPより)。

 上司という存在は、会社から求められている成果を上げつつ、部下のマネジメントを行い、チームのレベルを底上げしていくことが求められている。

 これは言葉で言うほど簡単ではない。特に部下のマネジメントは、まず一人ひとりのことをよく見ていなければいけないし、アドバイスするにしても相談に乗るにしても、適切なタイミングがある。「これをやってほしい」と仕事を渡しても、スムーズにこなしてくれる部下ばかりではないだろう。

 となると、部下に任せず「自分がやった方が早い」と思ってしまいがちだが、これでは部下は成長せず、チームのレベルも上がらない。上司の求められている役割は、人材を育成し、チームとして成果を出すこと。そのためには、しっかり部下との関係を構築しなければいけない。

 では、部下との関係を築くためにはどうすればいいのか。

 『できる上司は会話が9割』(林健太郎著、三笠書房刊)は、「会話」に注目し、部下を育成するにはどんなコミュニケーションを取るべきかが書かれている一冊だ。

部下は「ほめる」のではなく「承認する」

 昨今の人材育成のトレンドは「ほめて育てる」だ。

 しかし、積極的にほめても、部下の反応は鈍く、期待通りの成長を見せてくれないことも多い。ほめているのに、一体なぜなのか。著者は「これは起こるべくして起こっていること」だと述べる。

 確かにほめることは、部下のモチベーションを上げるうえで効果的な方法の一つだ。

 しかし、無意味にほめ続けては逆効果になることもある。だんだんと「忖度する部下」が生まれ、ほめてもらえる行動だけをとるようになるのだ。

 また、ほめられることに慣れてしまい、何をしても心に響かなくなることもある。これではモチベーションアップにはつながらない。使い過ぎると機能しなくなるのだ。

 では、効果的なほめ方はあるのか?

 それは自分が心から「ほめたい」と思ったときにほめればいい。部下の育成において、「ほめる」よりも大切なことがある。それは「承認」だ。

 相手がそこにいること、行動したこと、発言したことなどに対して「気づいているよ」「見ているよ」「受け取っているよ」ということをしっかり相手に言葉で伝える。そうすることで、部下の承認欲求は満たされる。

 例えば、部下が財布を変えたとき「いいデザインだね」と伝えるのが「ほめる」ことならば、「財布変えたんだね」と気づいてあるのが「承認」だ。「承認」は「ほめる」よりも、中立的な表現として部下に届くのだ。

 著者が考える「承認」の利点は、「ほめる」よりも使いやすい点だ。成果が出ていない部下に対しても、「進んでるね」「その調子だよ」という言葉を通して、そのプロセスを承認してあげられる。

 承認の言葉は、部下のモチベーションを高めることに役立つほか、部下に対して建設的なフィードバックをするときに、部下がそれを素直に受け入れる下地作りにつながる。 ほめることが苦手な人でも、「承認」はできるだろう。部下のやっていること、考えていることを認めること、それをまずは実践してみよう。

部下の「やる気スイッチ」を入れるにはどうすればいい?

 もう一つ本書から、部下の「やる気スイッチ」の押し方についてご紹介しよう。

 部下に同じことを何度も説明しているのに、なかなか覚えてくれないということはないだろうか。

 もちろん、「一度で覚えろ」というのは、人間の記憶の限界を無視した話だが、ジムのパーソナルトレーナーのように繰り返し教えていきながら、手間と労力と時間をかけてもなかなか仕事を覚えてくれないというときはどうすればいいのか。

 その原因は、部下の仕事に対する「やる気スイッチ」が入っていないことだと著者は指摘する。そして、そのスイッチを入れるのは上司だ。

 しかし、スイッチとなるものが何なのかが重要だ。特に一昔前と比べると、スイッチとなるものが減っているという。

 たとえば「マイホーム」「マイカー」といった物質的な豊かさと、「出世」「昇給」という経済的な豊かさの指標をリンクさせることで、スイッチを入れられたときもあった。ところが、現代は価値観の多様化によって、スイッチも人それぞれになった。出世に興味がない人も当たり前になり、同じ会社でずっと働き続けるという価値観も薄くなっている。

 そんな時代の中で、どうやってスイッチを入れればいいのだろうか。

 著者は、部下一人ひとりにとって、何が「鼻先のニンジン」なのかを探る必要があると述べる。そこで必要なのが対話だ。部下との対話を通して相手の感情や心情に対する理解を深め、相手にとってのモチベーションとなるものを見つけ出す必要がある。

 上司として求められていることは、一個人として仕事を推進する能力だけでなく、組織としての成果を上げるために、部下が動きやすい仕組みをつくることだ。その仕組みづくりに、部下との信頼関係は必要不可欠。多少手間がかかったとしても、信頼関係をつくりあげよう。

 また、何度説明しても仕事を覚えない理由の一つとして、上司側の説明の仕方に問題があるケースもある。自分でやればできるのだが、それを誰かに教えたり、伝えたりするのが苦手な人も意外にいるのだ。

 本書を読むと、上司の立場にある人はまず自分自身を見直すことから始まるだろう。そのうえで、部下との関係について考える。相手が動いてくれないときは、自分の伝え方に原因があることも多い。

 全体で結果を出せるチームづくりをしようとしている上司にとって、強い味方となる一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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