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【対談】岩瀬大輔・中川淳一郎「“低い”意識を持て!」

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 オレは博報堂時代にクライアントのPRをお手伝いする部署にいたんですけど、そこで上司から

「過去1年間の新聞から、ビールに関する記事を全部チェックしろ。そして、見出しで謳われている枕詞──例えば、『快進撃続く』とか『影を落としている』みたいな──を、各紙別に全部抜き出せ」

なんて仕事を任されたんです。当然、ものすごい記事の量になるし、いちいち目を通さなくちゃいけないから、手間も時間もすごくかかる。「クソッ、なんでオレ、こんなバイトでもできるような仕事をしてるんだよ!」なんて、ストレスもかなりたまったんだけど、なんとかそれを3日くらいで終わらせました。で、それが何に化けたかというと……某大手ビールメーカーの社長スピーチの元ネタになったんですよ。記者がどんなことを書きたいのか、ないしは自分たちがアピールしたいことやデータを記者はどう捉えているか、が「枕詞」には込められているんです。

岩瀬 面白いですね。

中川 作業をしている時は、社長スピーチの機能や役割なんて全然理解していませんでしたが、実は非常に重要な事柄に関わらせてもらったことに後で気付いて、すごくうれしかったし、やりがいを感じたんです。で、「この上司やっぱスゲェな」と尊敬もしたんです。

岩瀬 その業務の大切さとか重要さを知らないまま、やらされているような感覚になっていても、実はスゴイことに携わらせてもらっていることって、実は少なくないですよね。

 それからもうひとつの見逃せない要素として、過剰なコンプライアンス志向が裏目に出ているんじゃないかと。「これを言ったらパワハラになるんじゃないか」「無理強いしたらパワハラになるんじゃないか」みたいな及び腰感覚が、上司や経営陣にあるような気がしてなりません。

 ウチの会社でも、こんなことがあったんです。新人にいろいろ伝えたいことがあるんだけど、僕はどうしてもバタバタしてしまって、なかなか時間が取れない。

 「それじゃ、朝8時から一緒に新聞を読む会を始めよう」

なんて提案したんですよ。そうしたら人事からストップがかかりまして。「ウチは9時が就業時間。たとえ任意参加だとしても、副社長が呼びかけたとあっては、事実上強制になる」という話で。「なんだよそれ!」と思ったけど、世の中の風潮として、そういう過剰なコンプラ志向があるのも事実。そういう風潮が、人を育てるための、いい意味での厳しさとかを削いでしまっているところがあるのでは。

BusinessJournal編集部

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