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大塚将司「反メディア的! その記事、ダマされていませんか?」第10回

アベノミクス成長戦略が欠くもの なぜ新輸出産業の創出を描けないのか?

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安倍晋三首相
(「Wikipedia」より)
 安倍晋三政権が発足して約3カ月半。株式、為替のマーケットは株高、円安傾向が続いている。アベノミクスの「3本の矢」のうちの「2本の矢(財政出動と金融緩和)が好感を受けているためだ。

 第1の矢(財政出動)として、公共事業を柱にした2012年度の大型補正予算(緊急経済対策費10兆3000億円を盛り込んだ総額13兆1054億円)が2月26日に成立したのに続き、黒田東彦日銀新総裁の下で、日銀が4月4日に「まったく次元の異なる金融緩和」強化策を決め、相場は活況を呈している。

 しかし、マーケットはいつ豹変するかわからない。株高、円安傾向の持続には3本目の「矢(成長戦略)」が極めて重要になる。「3本の矢」がすべて目的通りの結果をもたらさない限り、デフレ脱却も難しい。

「成長戦略」には「民間投資を喚起する」と“枕詞”をつけ、甘利明経済財政政策担当相の下に日本経済再生本部を設置、さらにその下に産業競争力会議を設けて、成長戦略策定に入っている。6月頃に30年の日本の「社会のあるべき姿」を前提に戦略を発表する段取りだ。しかし、これまでの議論をみると、「民間投資を喚起する」という方向に向かっているとはとても思えない。

 1月23日に開催した第1回産業競争力会議で、甘利担当相が議論のたたき台として、以下の3つの分野で具体策を示す方針を示した。

(1)新しい産業や成長分野を国が応援する「戦略市場創造プラン」
(2)日本から企業が流出するのを防ぎ、雇用や所得の増大もめざす「ニッポン産業再興プラン」
(3)貿易の活発化などをめざす「国際展開戦略」

 2日後の1月25日に開いた第3回日本経済再生本部の会合でも、甘利担当相が同様の方針を説明している。

 甘利担当相が目玉に据えるのは「戦略市場創造」で、競争力会議では、次の4分野を重点課題としている。

(1)国民の「健康寿命」を延ばす
(2)経済的な再生可能エネルギーを実現する
(3)安全・便利で経済的な次世代インフラをつくる(4)農林水産業や観光業など地域の資源を生かす

 これらの分野の対策検討が無駄だというわけではないが、日本経済の再生という視点からは、すべて枝葉のようなテーマだ。

●個人所得増大のカギは外需増大

 約20年後の姿を見据える以上、そこには日本が世界でも類を見ないような人口減・超高齢化社会になっているという現実がある。それを前提にどうやって内需を増やすのか、考えねばなるまい。

 公共事業を柱とする財政出動以外に内需を拡大する術があるとすれば、一人当たりの個人所得を大幅に増やすことしかない。政府が企業に従業員の給与拡大を強制できない以上、経済再生の決め手は外需を増やす道以外にありえないのだ。だが、この10年余り、政権が代わるたびに、成長戦略が検討されたが、この視点は常に欠落している。それは安倍政権でも同様なのだ。

 戦後、日本が米国に次ぐ世界第2の経済大国にまで発展した過程を振り返れば、誰でも「成長の決め手は外需、つまり輸出だった」と気づくはずだ。最初は繊維などの軽工業分野での輸出拡大で高成長を実現、それで蓄積した経済力をもとに、今度は鉄鋼などの素材製造の装置型産業が急成長した。そして、電機、自動車の加工組み立て産業が競争力を強め、第2の経済大国に上り詰めたのではないか。

 10年にGDPベースで日本を抜き、第2の経済大国となった中国も、戦後の日本と同じ経路をたどっている。しかし、日本政府は真正面から外需を増やすための戦略を策定しようとはしない。一体なぜなのか?