NEW
大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第31回

セクハラ幹部の愛人が自殺!?大手新聞社、警視庁へ根回し、遺族には金でもみ消し?

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
couplenight0516.jpg
※イメージ画像 photo by dat
from flickr

【前回までのあらすじ】--巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、割烹「美松」で、村尾、両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)との密談が行われ、終了後、松野と村尾はそれぞれの愛人の元へ帰っていった。そして数日後、4人による第2回目の会談が行われた--。

 大都新聞取締役編集局長、北川常夫の抱えている事件の発端は21年前に遡る。日亜新聞社長の村尾倫郎が日亜ロンドン支局に赴任したのと同じ90年春である。この時、北川も大都ニューヨーク支局に派遣された。そこで、現地採用の女性補助記者と出会い、不倫関係になったのだ。

 支局勤務を終え、東京本社の経済部に上がったのは日亜取締役編集局長の小山成雄と同じだったが、小山が主に経済官庁と銀行など金融業界担当が長かったのに対し、北川は自動車、電機など産業界担当が長かった。ニューヨークでの担当は日米経済摩擦の火薬庫、米産業界の取材だった。

 北川は東京経済部在勤中から、持ち前の優男ぶりを武器にプレーボーイぶりを発揮、取材先の大企業の広報担当の女性社員たちと浮名を流し、大都では有名だった。ニューヨークでも、その性癖は変わらなかった。ただ、北川は英語が不得手で、少し勝手が違った。米国企業の外人女性社員からモテモテになるということはなく、畢竟、支局内にいる時間が長くなった。好意を寄せる補助の女性記者と深い仲になるのは自然の成り行きだった。

 3年後の93年春、北川は東京経済部に戻ることになった。この時、女性が哀願した。

「東京に連れて行って。お願いだから」

「一緒に帰るのは無理だけど、いずれ必ず呼び寄せる。それまで待っていてね」

 北川はプレーボーイなら誰でも口にする言葉を残し、旅立った。それが躓きのもとだった。東京経済部に戻った時、支局時代の愛人が自分を追いかけ東京にやって来るなどと予想もしていなかった。帰国後、時折、彼女が北川に国際電話をかけてきて、婉曲に「いつ頃、呼び寄せてくれるの?」と聞くことがあった。その度に北川は「もう少し待ってよ」と言いくるめた。時間がすべてを解決してくれると信じ込んでいたのだ。

 1年後の94年春である。彼女が国際電話で「4月から大都出版局に正社員として勤務することになったの」と連絡してきたのだ。この時、北川は受話器を持ったまま、一瞬、身が凍るような経験を味わった。

 彼女は言を左右して煮え切らない北川に業を煮やし、内緒で大都出版局の中途採用に募集に応募して、採用されたのだ。もちろん、ニューヨーク支局で補助記者として勤務していたことが決め手になった。編集局、出版局の部署は違っても、同じ大都に勤務しているのに、北川が彼女を避け続けることはできない。会ってしまえば、元の木阿弥になる。

 1年ぶりの再会で2人は燃え上がった。東京に戻り、引く手あまたの北川のほうは一夜限りのつもりだったが、彼女のほうは情の深い女だった。焼けぼっくいの炎は燃え盛るばかりで、さながら北川のストーカーだった。そうなると、北川は冷たい男だった。彼女が会いたがっても、仕事を理由に会うことすらしなかった。新しい職場で仕事をするという環境変化に加え、恋人につれなくされ続けるという心痛が彼女を追い詰めた。