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大塚将司『反メディア的!その記事、ダマされていませんか?」第14回

参院選、“あえて”民主党逆転策を考える…規制緩和や構造改革で経済成長するのか?

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国会議事堂(「Wikipedia」より/Wiiii)
 7月4日公示、21日投開票の第23回参議院通常選挙の選挙戦も中盤に差し掛かった。最大の争点がアベノミクスに対する評価であることは、誰の目にも明らかだ。しかし、最大野党の民主党はアベノミクス、とりわけ、自民党の成長戦略に対抗する具体的な政策を打ち出さないまま、“不戦敗”の雲行きだ。

 日本経済の将来を考える時、2つの立脚点がある。

 1つは超高齢化と人口減社会を前提に高望みせず、そこそこの成長で満足し、富の分配を見直すことで、国民全体の生活水準を底上げすることを目標にする立場(低成長派)である。

 もう1つは昭和40年代のような高度成長期ほどではなくとも、比較的高い成長を実現し、国富全体を増やすことで、国民生活を豊かにしようという立場(高成長派)。自公政権の安倍晋三首相が打ち出したアベノミクスは、まさにこの立場から掲げた政策である。

 それでは、政党はどちらの立場に立って政策を立案するのがいいのか? もし、政権獲得を狙うなら答えは決まっている。「成長は二の次でいいじゃないか」という主張を鮮明にしたのでは、選挙は戦えないからだ。“低成長派”の立場で策定した政策を掲げられるのは、万年少数野党で構わない政党だけだ。政権復帰を目指す民主党が21日投開票の参院選で自民党に対抗するには、アベノミクスに代わる大胆な政策を公約する以外に道はないのだ。

 アベノミクスの3本の矢のうち、 “第1の矢”の金融政策と、“第2の矢”の財政出動にマーケットは好感し、株高・円安が一気に進行したが、6月に“第3の矢”として発表した成長戦略がマーケットにインパクトを与えることはなかった。参院選を控える中、肝心の“第3の矢”の不評に危機感を覚えた安倍首相は即座に「秋に、投資減税を柱に成長戦略の第2弾をまとめる」と表明している。

 もし、民主党に参院選を本気で戦うつもりがあるなら、「賃金が上がらずに物価だけが上がり始めるなど副作用が強い」などと、アベノミクスのネガティブキャンペーンに終始していては駄目だ。

●3つのキーワードの呪縛

 だが、民主党は対案を打ち出せないでいる。その原因を思案すると、国民受けし続ける3つのキーワードの存在が浮かび上がる。「規制緩和」「構造改革」「官から民へ」の3つである。少なくとも、この20年間、主要政党は経済政策に限らず、これらのキーワードをキャッチフレーズにして選挙を戦うのが常だ。

 自民党も民主党も同じなのである。政敵から「規制強化」「守旧派温存」「官主導」などと批判される恐れのある政策は、怖くて掲げられないのだ。しかし、3つのキーワードに合致する政策は、日本の経済成長に直結するとはいえない。

 前回のコラムで指摘したように、「規制緩和」「構造改革」は事業主体の新陳代謝をもたらすが、経済成長を実現する需要増にはつながらないからだ。「官から民へ」も同様だが、安倍首相は「民の力を爆発させる」と言って、成長戦略で民重視の姿勢を鮮明にしている。

 過去20年を振り返ればわかることだが、政権に関係なく、キャッチフレーズに逆行するような政策運営はしていない。つまり、日本の経済システムは「規制緩和」「構造改革」「官から民へ」に向かって“前進”している。にもかかわらず、民の力は爆発せず、日本経済は15年もの長きに渡り、デフレの泥沼から抜け出せずにいる。

 日本人も、そろそろ「3つのキーワードに縛られている限り、展望は開けない」と認識すべき時期に来ている。民主党が自民党と同じ“高成長派”の土俵に留まるなら、経済政策に限ってはこの呪縛を解き、外需の拡大に的を絞った成長戦略を掲げるべきなのだ。

 参院選は衆院選と違い、政権交代につながることはない。しかも、今年に入り成長率をはじめ各種の経済指標は好転している。6月23日の都議選の結果をみるまでもなく、現政権の自公両党に強い追い風が吹いており、少々のスキャンダルや失言が出たとしても、自公圧勝の流れは変わるまい。

 だから、民主党は戦う前からあきらめているのかもしれない。しかし、3年半後にはまた衆院選がある。その時にはアベノミクスの成否がはっきりしている。そうである以上、自民党より先に呪縛から脱却しなければ、政権復帰の展望は開けない。
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

※本記事は、「週刊金曜日」(金曜日/950号)に掲載された筆者の連載『経済私考』に加筆したものです。

●大塚将司(おおつか・しょうじ)
作家・経済評論家。著書に『流転の果てーニッポン金融盛衰記 85→98』(きんざい)など