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コンピュータや機械は、どこまで人間の仕事を奪うのか?置き換えにくい意外な仕事とは?

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「Thinkstock」より
 コンピュータや機械による仕事の自動化が進んだ未来において、人間が行う仕事はどうなっているのか。その未来像は明確に描かれていない。

 そもそもなぜ、人間はコンピュータや機械を生みだしてきたのか。工学的研究や娯楽などの目的を除けば、行きつくところは“仕事の合理化”のためということになる。

 人が仕事をすれば、休みも必要になるし、ミスも起きる。企業はそれさえ許すまじと、人の作業の限界を超える生産性を追い求めてきた。それを実現させたのがコンピュータや機械だ。これらは人と違って疲労を訴えることはない。そして当たり前だが人為的ミスも犯さない。

 機械の出番が増えるほど、人間の出番は減っていく。人の仕事が機械の作業に置き換わることは、前々から起きていたことだ。企業は、ものづくりの現場で機械による自動化を進めた。ラインの両側で部品をはめる作業の主体は、人からロボットへと確実に置き換わっていった。

 機械が人の仕事を奪う現象は、ものづくりの現場以外でも進んでいる。古くは1970年代、電話のリレー役を果たしていていた電話交換業が自動化された。90年代には企業のコールセンター業務の一部が音声ガイドにより自動化された。現代では、受付業務の自動化が進んでいる。ソフトバンクは今年4月、iPhoneなどの端末などで来客に対応する受付システムを開発したと発表した。

 機械化する仕事は、これらのものづくり業務や対応業務だけで済みそうにない。

 マサチューセッツ工科大学ビジネススクールの研究員エリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーは、著書『機械との競争』(日経BP社/2013年刊/原題『Race against the Machine』<12年刊>)で、コンピュータや機械に置き換わられやすい仕事とそうでない仕事の線引きをしている。

 コンピュータや機械が得意とするような仕事では当然、置き換わりが起きやすい。ブリニョルフソンらが指摘するのは、コンピュータはルールに従う仕事を得意とするということだ。作業に突発的な対応を含まない、ルーチンワークを基本とする仕事は、コンピュータや機械に置き換わられやすいといえるだろう。

 情報処理も、コンピュータが最も得意とする作業のひとつだ。人間が知りたがっている傾向を、データ解析により示す。それだけでなく、どの方法で対処するのが、最も効果的かを計算で導き、成功確率とともに示す。こうした、情報処理や予測を伴う職業も置き換わられやすい。

●人間の愚行か?

 一方で、ブリニョルフソンらは、コンピュータや機械が人間に追いつきづらい仕事の特徴もあげていく。

 ひとつは想像しやすいが、創造性を伴う仕事だ。

 例えば、コンピュータが長編小説をつくることは今のところできない。日本では現時点で、SF作家だった星新一の書いた「ショートショート」のような定型的超短編小説をコンピュータに書かせるプロジェクトが、はこだて未来大学の松原仁教授らにより進められている。これは、複雑な筋立てや伏線などを伴う独創的長文をコンピュータが書くにはまだ遠く及ばない現状を示していると捉えることもできる。

 もうひとつは意外かもしれないが、肉体労働にかかわる仕事だという。

 例えば、庭師や美容師や介護ヘルパーなどがそれにあたる。これらの職業は、動作しながら判断や処理を行うという点で共通している。「視覚や繊細な運動機能や移動運動は、自動化がはるかにむずかしい」(『機械との競争』より)

 ただし、これらの職業も、コンピュータや機械が人間に絶対に追いつけないというわけではない。情報技術の進歩の速さには、人の想像を凌駕するものがある。例えば、動作しながら判断や処理を行う“自動車運転”の自動化の試みは進んでいる。

 人間が自分たちのために開発したコンピュータや機械によって、自分たちの仕事を奪われていく。この事象も将来、戦争や環境破壊と並んで、人類の愚行の一例に加えられていくのかもしれない。
(文=漆原次郎/フリーライター)