日本銀行が“墓穴”を掘ってしまった。日銀が1月8日に発表した2015年12月の「生活意識に関するアンケート調査」では、個人の景況感が1年ぶりに「悪化」した。
問題のアンケート調査は、日銀が年に4回実施しているもので、全国の満20歳以上の4000人を対象に行われる。12月調査は11月6日から12月3日まで行われ、有効回答者数は2122人だった。
その結果、1年前と比べると景気が「良くなった」の回答割合から「悪くなった」の回答割合を引いた景況感(DI)は、マイナス17.3と前回調査の15年9月のマイナス15.2から2.1ポイント悪化した。DIが悪化したのは1年ぶり。さらに悪いことに、1年後を予想したDIもマイナス19.9と9月調査から悪化している。ここに来て個人の景況感が悪化していることは明白だ。
そこで、現在の暮らし向きに関する回答を見ると、暮らしに「ゆとりが出てきた」の回答割合から「ゆとりがなくなってきた」の回答割合を引いたDIは、マイナス39.7と9月調査のマイナス41.0から改善している。
実は、これにはちょっとしたカラクリがある。確かに「ゆとりがなくなってきた」との回答は9月の46.6%から44.0%に改善しているが、同時に「ゆとりが出てきた」は5.6%から4.3%に悪化しているのだ。そして、「どちらとも言えない」が47.5%から51.6%に増加している。つまり、ゆとりがなくなった人も減っているが、ゆとりがある人も減っており、どちらとも言えない人が増加したということ。決して、個人の暮らし向きが改善しているということではないのだ。
「景気が良くなっている」とウソをつく理由
黒田東彦・日銀総裁の押し進める量的・質的金融緩和(いわゆる黒田バズーカ)の真の狙いは、消費者マインドに働きかけ、「景気は良くなり、デフレ経済から脱却する」と“思い込ませる”ことにある。つまり、「将来、景気が良くなり、消費者物価が上がる」と思い込ませることにより消費活動を活発化させ、景気回復を図ろうというものだ。
しかし、肝心の個人の景況感が悪化したのでは、目標の達成はおぼつかない。公約だった「2年程度で消費者物価指数2%上昇」の達成は、すでにウヤムヤになっており、ここで景況感が悪化し景気が腰折れでもしようものなら、黒田総裁に対する批判が渦巻くだろう。