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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国・習近平政権、崩壊の危機…国内の反発抑制のため日本領海侵犯を連発

文=渡邉哲也/経済評論家
中国・習近平政権、崩壊の危機…国内の反発抑制のため日本領海侵犯を連発の画像1習近平国家主席と中国人民解放軍(写真:新華社/アフロ)

 本連載前回記事で、中国の苦しい現状とイギリスやドイツの“中国離れ”について論じたが、今回は別の角度から中国の現状を見ていきたい。

 ドイツ経済といえば、2015年にフォルクスワーゲン(VW)がディーゼルエンジンの排出ガス規制に関して不正を行っていたことが発覚、VWはアメリカ当局に約1兆600億円の賠償金を支払うことで合意している。今後、ほかの国に対しても巨額の支払いが課される可能性があるVWだが、そのメインバンクがドイツ銀行だ。

 ドイツ銀行は、VWの不正発覚後に約1兆円の融資を行っているが、将来的に融資が焦げついたり、さらなる金融支援が必要になったりする可能性がある。そして、その時の対応次第ではVWとドイツ銀行が連鎖破綻に陥る危機すら予想されている。また、VWは積極的に中国展開を進めており、15年の世界販売台数の約3分の1を中国に依存している。つまり、中国経済の悪化はドイツにとって切実な問題なのだ。

 そして、そこで問題になるのが「ユーロダラー」だ。これは、アメリカ以外の銀行に預けられた米ドル預金のことで、主にヨーロッパの銀行が市場である。ドル建て債券やドル融資も含まれるが、ユーロダラー取引の拠点はイギリスのシティであり、ドルの為替取引全体の約4割(ウォール・ストリートの2倍)を占めているとされる。

 シティといえば世界的に有名な金融センターだが、それはなぜだろうか。実は、時差を考えた時にイギリスは有利な場所にある。為替取引において、午前中はアジアとヨーロッパのマーケットにアクセスでき、午後になればアメリカのマーケットが開く。つまり世界の為替市場に常時アクセス可能なため、取引に最も適しているのだ。

 そして、国際化に向けて急拡大する人民元の取引の拠点になることを狙い、さらには中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の後見人的な役割を担っていたのがシティおよびイギリスだった。しかし、前回記事で述べたように、イギリスはEU(ヨーロッパ連合)離脱に伴って政権交代が行われ、対中戦略の転換点を迎えている。こうして見ると、あらゆる面で中国および人民元の後ろ盾が失われていく可能性が高いわけだ。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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