1匹3千円に高騰…サンマ、食べないとキレやすくなる?日本人の知能が高い原因は大量の魚食?
今年のサンマの卸値は、なんと昨年の3倍で、東京・築地市場の初サンマは1匹3300円の値を付けたそうです。最近はすっかり、高級魚の仲間入りをした感のあるサンマ。「こんなことなら、安い時代にたくさん食べておけばよかった」と思っておられる左党(お酒好き)の方も多いはず。今回は、サンマに含まれるすごい化学物質のお話をします。
まずは、どうしてこんなにサンマが高くなったのかについて見てみましょう。サンマの漁場と海水の表面温度の間には、密接な関係があります。もともと、日本近海で豊富に獲れていたサンマですが、地球環境の変化に伴う海水温度の上昇により、年々日本からサンマの群れが遠ざかっているようです。
北極海から千島列島に沿って、冷たく栄養豊富な海水を運んでくる親潮が、今年は例年よりもかなり北の海域で、南から上昇してきた黒潮とぶつかってしまい、親潮が南下できなくなって東に逃げてしまいました。かつてはいい漁場だった北海道・釧路沖の海水温度がお盆をすぎても下がらず、冷たい海水を好むサンマが日本にそっぽを向いている状態にあります。
有名な古典落語「目黒のさんま」には、お殿様と家来との次のようなやりとりがあります。
「このサンマ、いずれより取り寄せたのじゃ?」
「日本橋魚河岸にございます」
「あっ、それはいかん。サンマは目黒にかぎる」
この落語に登場するお殿様は、サンマを見たことも食べたこともありませんでした。ひょんなことから生まれて初めて目黒でサンマを食べて、そのおいしさに感動し、それ以来、市場があって新鮮な魚が手に入る日本橋よりも、内陸の目黒のサンマがいいと思い込んでしまった、というのがオチです。
この落語からわかる通り、江戸時代にはサンマは下魚とされ、お金のない庶民の食べ物でしたので、隔世の感があります。
お殿様は食べなかったサンマですが、栄養の観点から見ると、非常に優れた食品です。特に、健康上注目に値するのはドコサヘキサエン酸(DHA)などの多価不飽和脂肪酸です。
脂肪酸は細胞膜の成分ですが、脳の神経細胞は、その他の臓器細胞に比べて細胞膜成分が非常に多いのが特徴です。したがって、DHAは特に脳において、細胞を形成し、脳の成長と健全性の維持に重要な役目を担っています。それほど重要であるにもかかわらず、人間はDHAを体内でつくり出すことがほぼできないため、必要な量を食品から摂取する必要があります。
DHAは、サンマに代表される青魚に多く含まれています。イギリスの研究者らが、「日本人の子供の知能指数が高いのは、魚を大量に食べるためである」という発表を1980年代に行ったことがあり、それがきっかけでDHAが国内外で注目を集め、DHAサプリブームが起きました。
『食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』 野菜を食べると体によい。牛肉を食べると力が出る。食べ物を食べるだけで健康に影響を及ぼし気分にまで作用する。なんの変哲もない食べ物になぜそんなことができるのか? そんな不思議に迫るべく食べ物の体内動態をちょっと覗いてみよう。