牛乳は健康に良いのか悪いのか?
牛乳を定期的に飲むことが、健康に良い食生活である、という考え方は、比較的最近まで世界的に広く認知されたものでした。成長期のお子さんの場合には、身長を伸ばすために有効だと考えられていて、大人になってからは、将来の骨粗鬆症の予防に有効だとされていました。かつては粘膜を保護する、胃潰瘍の治療薬としても使用されていました。カルシウムの摂取のためには、牛乳を含む乳製品の吸収率が高く、効率的であるとも考えられていました。
しかし、その一方で牛乳は健康に悪いのでは、という考え方も、近年では決して少数派とはいえません。
牛乳というのはかなり高カロリーの食品で、動物性の脂肪を多く含んでいます。特に大人になっても牛乳を飲むという習慣は、肥満や動脈硬化に結びつく可能性が否定できません。牛乳に含まれる蛋白質のカゼインは、1型糖尿病の原因の1つなのでは、というデータが複数報告されています。一部のがん、特に前立腺がんは、乳製品の摂取量と関連があるとする、これも複数の報告があります。
牛乳には乳糖が含まれていますが、この乳糖は人間の乳糖分解酵素により、ブドウ糖とガラクトースという2種類の単糖類に分解され、その後に身体に吸収されます。小さなお子さんはこうした酵素を多く持っていて、そのため効率的に乳糖を分解して吸収できるのですが、大人になるとその効力は落ち、吸収される量は減ります。
そしてこのガラクトースは、比較的少量の摂取においても、動物実験では酸化ストレスを増し、慢性の炎症を惹起して、老化を促進するという複数の報告があるのです。
ガラクトースの健康への害
ネズミにおいては、体重1キログラム当たり100ミリグラムのガラクトースで、慢性の炎症や老化促進の影響が生じるとされています。この量を人間で換算すると、6~10グラムとなり、概ね1日当たりコップ1~2杯の牛乳を、飲み続けることに相当します。乳糖は生乳に5%程度含まれていて、それが200ミリリットル当たり5グラムのガラクトースに、ほぼ変換されるからです。
仮に動物実験と同じことが人間にも当てはまるとすると、1日コップ1~2杯程度の牛乳を飲んでいても、老化が促進されるということになり、これは由々しき事態で、今の牛乳の摂取についての考え方を、根底から見直さなければならない、ということになります。
しかし、本当にそれは人間においても当てはまるような事実でしょうか? それは今のところ明らかではありません。