いま、介護業界や医療業界で大きく話題になっている映画がある。6月17日に公開された『ケアニン~あなたでよかった』(ユナイテッドエンタテインメント)だ。同映画は、現在の介護を取り巻く問題を捉えつつ、主人公の青年が介護を通して人間的に成長する過程を描いている。
安価に利用できる特別養護老人ホームは全国に約9500カ所あるが、超高齢化社会となったいま、待機者は約36万6000人にも上り入所は困難を極める。特養の新規開設も進められているが、特養待機者は増える一方だ。
また、さらに解決が急がれる問題がある。それは介護職の不足だ。一部では、介護施設があっても、そこで働く介護職員が足りず、利用者が入所できないという事態が生じているという。国は、2016年度より特養の整備費拡充を最重要施策としているが、介護職が定着せず整備は遅々として進まない。ここ数年、介護職の離職率は16%程度と、非常に厳しい状態が続いている。介護職のイメージは悪く、「きつい・汚い・危険」の3Kどころか「きつい・汚い・危険・給料が安い」の4Kと揶揄されている。
そんな介護職のイメージを『ケアニン』が大きく変えるきっかけとなるかもしれないと、期待が持たれている。同映画の原案とエグゼクティブプロデューサーを務めた山国秀幸氏に話を聞いた。
介護=3K、4Kではない
山国氏は、これまでも社会的なテーマを題材に映画を製作してきた。今回、介護の仕事をテーマにしたのは、映画を通して介護職の魅力を伝えることで、ひとりでも多くの人が介護職を目指すきっかけになればと考えたからだという。同氏は映画を製作するにあたり、約30カ所の介護福祉施設や専門学校、関連団体に取材し、実際の現場と一般にいわれているイメージとのギャップを感じたと語る。
「介護の仕事は3K、4Kといわれていますが、介護施設の現場などを実際に取材すると、やり甲斐を感じてがんばっている人や、自分の仕事に誇りを持っている人がたくさんいました。彼らのその姿や想いを映画の中でリアルに描くことで、介護職の素晴らしさを伝えることができると思いました」(山国氏)