抹殺された生物学的元素転換
本来、人間を含めた動物は成長して自身の体重を増やしていくためには、外部から栄養素を摂取する必要がある。特に若い成長期においては、その摂取量は汗や便などの排泄量よりも重量的に十分に上回っていなければならないはずである。また、大人になっても、少なくとも排泄量と摂取量はバランスが取れている必要がある。
もちろん、重量バランスさえ取れれば、摂取物はなんでも構わないわけではない。人間の場合、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが適度に必要である。さもなければ、体重は減少していき、健康維持は難しくなる。しかし、ごく稀に、子供を含め、水しか飲まずに体重を落とさずして生活していける人々がいると報告されることがある。近年、日本でも野菜ジュースを飲むだけでやっていける人々が話題になった。
栄養素の摂取量が足りていないそんな人々の体内では、いったいどのようなことが起こっているのだろうか?
人間のような動物において、詳細を調べることは極めて難しい。体重だけに注目してみても、人間は衣服を着て、時折水を摂取し、発汗や排尿があるため、常に変動する。厳密に24時間追跡していくことは不可能に近い。多くの場合、本当に何も食べていないのかどうか、監視する程度で終わってしまい、体内で生じていることを科学的に把握する段階にまでは至らない。そもそもほとんどの科学者はそんな話を信用せず、本格的に調査を行おうとしないのである。
それは、現在では科学界が否定している生物学的元素転換につながるためだといえるだろう。生物学的元素転換とは、生物の内部で特定の元素が別の元素に転換されると考えられた現象であり、1960年代にフランスの科学者ルイ・ケルヴラン(1901-1983)が明確な概念として確立した。
だが、その起源は400年以上過去に遡る。1600年頃、フランドルの化学者ヤン・ファン・ヘルモントは水だけを与えて生長させた樹木の重量が数年後には大きく増えていたことを発見している。1822年には、イギリスのウィリアム・プラウトは鶏の卵から産まれたヒヨコに含まれる石灰分が卵の4倍にも増加していたことを報告。同じ頃、フランスの化学者L・N・ヴォークランも、鶏の卵の殻に含まれる石灰分が餌として与えたオート麦の石灰分をはるかに上回る量であったことを確認している。