2015年10月1日付当サイト記事『安倍政権、また新たな税導入を画策 国民に二重課税の恐れ』で、森林や里地里山などの自然環境を維持・回復するための「森林環境税(仮称)」創設を、環境省や林野庁が検討していると報じた。
03年に高知県が初めて森林環境税を創設、その後は各県が導入し、15年度当時でも35県で同様の目的税が導入されていた。さらに、市町村ベースでは09年に神奈川県横浜市が緑の保全・創造を行うための財源として「横浜みどり税」を導入していた。
各県の森林環境税は、県民税の超過課税である。超過課税とは、地方税法上で定められている標準税率を超える税率を条例で定めて課税する方式で、簡単にいえば、県民税に森林環境税が上乗せされたかたちのものだ。しかし県民税は使途が特定される目的税ではなく普通税のため、当時から「森林環境税が、本来の目的外の用途に使われるのではないか」という問題が指摘されていた。そこに環境省や林野庁がほぼ同様の目的の「森林環境税(仮称)」を創設しようとしており、二重課税になる恐れがあった。
そして昨年末、ほとんど報道されていないが、18年度農林水産省(林野庁)税制改正大綱に「森林環境税(仮称)」と「森林環境譲与税(仮称)」の創設が決まった。立ち消えになったと思われた森林環境税は、水面下で静かに潜行し、ついに日の目を見た。
森林環境税の「理屈」
新たに創設される森林環境税は、森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)からなる。創設理由としては、次のように説明されている。
<森林整備を進めるに当たっては、所有者の経営意欲の低下や所有者不明森林の増加、境界未確定の森林の存在や担い手の不足等が大きな課題となっており、森林現場の課題に対応するため、現場に最も近い市町村が主体となって森林を集積するとともに、自然条件が悪い森林について市町村自らが管理を行う「新たな森林管理システム」を創設することを踏まえ、国民一人一人が等しく負担を分かち合って我が国の森林を支える仕組みとして創設される>
まったくもって、何が何やらよくわからない理屈だ。森林環境税(仮称)は、個人住民税の均等割の納税者から、国税として1人年額1000円を上乗せして市町村が徴収する。税収については、市町村から国の交付税及び譲与税特別会計に入る。個人住民税均等割の納税義務者が全国で約6000万人いるので、税の規模は約600億円となる。時期については、東日本大震災の住民税均等割の税率引き上げが23年まで行われていること等を踏まえ、24年から課税される。