一方、森林環境譲与税(仮称)は、国にいったん集められた税の全額を、間伐などを実施する市町村やそれを支援する都道府県に客観的な基準で譲与(配分)する。森林現場の課題に早期に対応する観点から「新たな森林管理システム」の施行と合わせ、課税に先行して、19年度から開始される。
譲与税を先行するにあたって、その原資は交付税及び譲与税特別会計における借入により対応することとし、譲与額を徐々に増加するように設定しつつ、借入金は後年度の森林環境税(仮称)の税収の一部をもって償還する。譲与額を段階的に増加させるのは、主体となる市町村の体制の整備や、所有者の意向確認等に一定の時間を要すると考えられることによるもので、19年度は200億円から開始することとなっている。従って、税の徴収は24年度からだが、その税を使った事業は19年度からスタートするということだ。
二重課税の恐れも
さて、冒頭の15年掲載記事で、森林環境税について以下の問題点を指摘した。
(1)都市部の住民は森林整備による受益についての実感が薄い
(2)林業など特定の業種に対する補助金のような性質を持ち、特定の業種だけにメリットがあるのではないか
(3)すでに地方自治体が導入している森林環境税との棲み分けや区分をどうするのか。二重課税になるのではないか
今回の森林環境税導入にあたっては、地球温暖化防止や災害防止等を図るための地方の安定的な財源であり、全国の市町村等の住民がこれを有効に活用することにより、各地域において、これまで手入れができていなかった森林の整備が進むと考えられる。また、森林があまりない都市部の市町村においても、森林整備を支える木材利用等の取り組みを進め、たとえば山間部の市町村における水源の森づくりを共同で行ったり、都市部の住民が参加して植林・育林活動を実施したりといった、新たな都市・山村連携の取り組みも各地で生まれることを国は期待している。
森林環境税により、森林整備に地域の安定的な財源が確保されることは、さまざまな森林の公益的機能の発揮を通じて地域住民や国民全体の安全・安心の確保につながるとともに、地域の安定的な雇用の創出など、地域活性化にも大きく寄与するとされる。
前出の問題点(1)については、都市部住民の受益は、森づくりに参加することや材木利用等に取り組むことなどによって得られるとし、(2)については林業だけではなく、地域の安定的な雇用の創出など、地域活性化にも大きく寄与するとしている。また、(3)の二重課税についての言及はない。
国民が無関心とはいえ、わずか年間1000円の増税だとしても、国会が森友問題で揺れるなかで十分に審議されることもなく増税が決まり、そのことに対して周知も行われないまま、新たな税がスタートするのは “闇討ち”のようなものではないか。国民のどれぐらいが、新税の存在を知っているのだろうか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)