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安倍政権、野村不動産の過労死を隠蔽…裁量労働制を推進で、無給の長時間残業拡大

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
安倍政権、野村不動産の過労死を隠蔽…裁量労働制を推進で、無給の長時間残業拡大の画像1安倍首相(Natsuki Sakai/アフロ)

 今国会の目玉である「働き方改革関連法案」のなかで、現行の企画業務型裁量労働制の対象を営業職などに拡大する部分が削除され、国会提出が見送られた。最大の理由はデータのねつ造や事実の隠蔽による政府の“偽装工作”が露呈したことにある。

 事の発端は安倍晋三首相が1月29日の国会答弁で「厚生労働省の調査によれば裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般的労働者より短いというデータもある」と発言したことだ。だが、その元となる厚労省の調査自体が客観性を欠く不適切なデータであることが判明した。

 もう1つの厚労省の外郭団体である独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査(『裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果』2014年6月)では一般労働者よりも裁量労働制の適用労働者の労働時間が長いという調査結果が出ていた。

 3月23日の衆院厚生労働委員会で加藤勝信厚労大臣は精査するとしていた元のデータについて「実態を反映したものとは確認できなかった。裁量労働制のデータそのものについて撤回する」と発言した。つまり、一般労働者に比べて裁量労働制の労働者の労働時間が「短くなる」というデータは存在しなかったのである。政府のデータ偽装による最初の“騙し”である。

野村不動産問題

 2番目が、野村不動産の裁量労働制の違法適用に対する特別指導に関する政府の発言である。安倍首相は1月29日の国会答弁で「野村不動産は、本来制度の対象にならない方までも裁量労働制の対象として扱っていた。政府としては、制度が適正に運用されるよう、今後とも指導を徹底する」と発言。加藤厚労大臣も2月20日の国会答弁で「野村不動産をはじめとして適切に運用していない事業所等もありますから、そういうものに対してしっかり監督指導を行っている」と発言している。

 つまり、裁量労働制を営業職に拡大しても「政府は監督指導を徹底しますのでどうぞご安心を」と言っているのである。ところが安心するどころか、東京労働局が野村不動産を特別指導したのは、同社の50代の社員が過労自殺して労災認定を受けたことがきっかけであることが、あとでわかった。すでに過労死が発生したあとの監督指導では意味がない。政府は過労死の事実を隠蔽したまま「監督指導するので安心を」と強弁した。これが第2の“騙し”である。

 さらに裁量労働制の適用に関して、17年に全国の272の事業所で是正勧告や指導を受けていた事実を、厚労省は3月22日の野党の合同ヒアリングで明らかにしている。現行の裁量労働制にしても、いいかげんな適用をしている企業がかなりあるということだ。

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