( 朝日新聞出版/山岡淳一郎)
愛人を使って販売価格を吊り上げる
物件を購入する際、最低限知っておかなければならず、また最重要ポイントなのが適正購入価格の計算方法であり、次の計算式になる。
・購入価格=年間家賃収入÷期待利回り
期待利回りは、エリアや物件によっておおよその相場が判断できるが、新築は5~6%、中古は8~15%程度が見込まれる。ただし、前回も触れたが、利回りは表面利回りなのか実質利回りなのかという点も重要。業者の広告ではほぼすべてが表面利回りだが、買い手は経費を差し引いた実質利回りにも注意を向ける必要がある。
さらに大事なことは、
「投資元本が確保できて、初めて『利回り』といえる」
という点である。つまり、「将来の売却価格-購入価格」がマイナスになると、その分の損失が生まれ、収益が圧迫されてしまう。これについては、前回紹介した「出口戦略」が重要となってくるので、参考にしていただきたい。
「不動産投資をすでに始めている、また始めようとしている人は、とかく利回りばかり重視する傾向にありますが、最も重視すべきは、家賃相場です」
と強調するのは、不動産業務に詳しいFP・通称きゃさりんさん。
現時点の入居者が支払っている家賃が、相場と比べて適正なのかどうか見極める必要があるが、多くの購入検討者は家賃相場を甘く考えがちで、業者はそこにつけ込んでくるという。つまり、業者はできるだけ家賃を高く見せることで、購入価格を吊り上げているというのだ。その事例を紹介しよう。
購入後にわかった、入居者不在のボロボロ物件
A社から投資用のワンルーム物件を紹介してもらったBさん。本来であれば家賃相場は7万円程度であったが、その物件では現在10万円で借りている入居者がいるということで、Bさんは大変気に入り、その物件を買った。
だが、実態はこうだ。
できるだけ家賃を高く設定しようと、A社の社長は自分の愛人の名前を入居者として使い、あたかも10万円で借りているということにする。実際は、愛人はそこに住んではいないが、“正式”な賃貸借契約書を作成してBさんに見せることで、それは“事実”となるのである。