部品の共通化を進めすぎたため、独創性に欠けるクルマばかりになったとの指摘もある。また、外資系証券会社は、「販売台数の増加にこだわりすぎている。目標に拘泥する余り、過度に兵站線が拡大して、本来の力を十分に生かせない悪循環に陥っている」と解説する。ゴーン氏のコミットメント(目標を必ず達成する)経営が北米の営業減益の原因だとすれば、業績低迷の責任を負わなければならないのはゴーン社長自身ともいえる。

●深刻なEV不振

 円安効果で業績の上方修正が相次ぐ日本車メーカーの中で日産が業績の下方修正を発表したことについて、「ゴーン社長の戦略ミスが影響している」(自動車担当アナリスト)との厳しい指摘がある。

 その象徴がEVの迷走だ。日産とルノー両社のトップに就くゴーンCEOはEVを次世代自動車の主役と位置づけ、率先して開発に取り組んできた。10年12月、日本と米国で世界初の量産型EV「リーフ」を発売。11年には、「17年3月までにルノーと合わせ150万台を販売する」と宣言した。

 だが、販売は低調だった。今年4月、担当の執行役員を更迭、志賀COO(当時)が直轄する体制に移行した。国内市場におけるリーフの累計販売台数は9月末で3万台。ルノーと合わせたリーフのグローバルの累計販売台数は8万3000台にとどまる。これでは150万台達成は難しい。世界で150万台販売する目標の達成時期を4年遅らせ、21年3月に延期した。それでも、あと7年間、毎年20万台のペースで売っていかなければ目標は達成できない。

 米国では2013年モデルから現地生産に切り替え大幅な値引き販売に踏み切るなど立て直しを図った。値下げ効果でシアトル、ポートランド、サンフランシスコの西海岸ではリーフが最も売れている日産車になった。州の補助金に加え、多くの人数が乗るバスなどの優遇レーンにEVの乗り入れが可能になったことなどが要因に挙げられている。

 EVに対しては日本を始め世界各国で多額の補助金や投融資による支援が行われている。日産はそうした公的支援を直接・間接に受けて事業を立ち上げている。日本政府が今年3月から14年10月を期限に「次世代自動車充電インフラ整備推進事業」として1005億円の予算を計上、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)向けの充電設備を設置した場合、最大3分の2を補助する制度を始めた。日産リーフの支援策の色彩が強い。これほど手厚い支援を受けているため、日産は高く掲げたEVの旗をいまさら降ろすことができなくなっている。EVは経済性、経済原則だけで撤退を判断できるクルマではなくなった。EV担当を志賀氏からパーマー副社長に交代させ150万台の販売に挑むが、残された時間はあまりない。

 コミットメント経営を掲げるゴーン社長にとって、EV経営計画の未達は深刻だ。それゆえ、ゴーン社長のCEO職が10年以上に及ぶことへの弊害を問う声が、11月1日の記者会見であがった。「(いつ退任するかは)株主に判断してもらう」と記者の質問をかわしたが、「日産の救世主という賛美は経年劣化しつつある」(業界関係者)との声も聞こえる。

 ゴーン社長は来年春に開かれるルノーの株主総会でCEOの任期切れを迎える。欧州の景気低迷を受けルノーの経営環境は厳しい。ルノーの筆頭株主で15%の株式を持つ仏政府の出方によっては、ルノーの経営トップの座も揺らぎかねないが、ルノーと日産でワンマン体制を確立したゴーン社長は、「自分が立て直す」と続投の構えを見せている。ゴーン社長の去就に、業界内の注目が集まっている。
(文=編集部)

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