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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

名古屋に奇跡のカフェ!遠方から客殺到の秘密 絶品ナポリタンと洋菓子の物語

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 それでも続けられるのは、お菓子への愛情と探求心のようだ。千尋氏を取材していると、常に新しいテーマに挑み続ける姿勢を感じる。たとえば近年のテーマのひとつは「身体にやさしいお菓子づくり」だ。

 実は同店は病院ともコラボレーションしている。同店のお菓子が好きで施設運営の会社に勤めている人から「病院内に入る、カフェレストランで出すお菓子をつくってほしい」と依頼があったのだという。病院に付属するカフェには、高齢の入院患者も来れば、付添者や見舞客も来る。ここで働く医師や看護師も立ち寄る。健康な人はもちろん、身体機能が衰えた高齢者も楽しめるお菓子をどう開発するかを思案し続けた。

 課題解決のヒントは「素材の引き算」にあったという。栄養バランスを考えながらカロリーを抑えるという発想だ。洋菓子が人気になるにつれて素材も足し算になっていたが、何を減らし、どの材料をどう置き換えるかを試行錯誤していった。こうして開発したのが低脂肪の「大豆クリームのショートケーキ」や「モンブランロール1/2」につながった。高齢者向けではなく、誰もが楽しめる味がモットーで、世代を問わずに人気だという。

大豆クリームのショートケーキ

父から見た娘への採点は「50点」。足りない部分を進化させる

 現在の同店には、世代を超えた客が来店する。店の特徴で興味深いのは、スタイリッシュにしないで昔ながらのテイストを残すこと。冒頭の写真で示したように、外観は欧州の店のようだ。改築時に石畳はフランスから、レンガはイタリアから直輸入し、建物建築は宮大工に頼んだという。歳月を経て周囲の樹木が建物に溶け込んでいる。

 入口には、名古屋の店ではおなじみのスポーツ新聞もズラリと置く。長年通う中高年の客はスポーツ紙を読みながらコーヒーを楽しむことができる。

 フードメニューでは「イタリアン」と呼ぶ、ナポリタン味の鉄板スパゲティが人気だ。田中氏が開発した味で、週末には1日200食出ることもあるという。90年代のイタメシブームの時代には人気が低迷したが、近年の昭和レトロブームやナゴヤメシ人気も追い風に安定した売れゆきを示す。

鉄板スパゲティ

「食べログ」などインターネットサイトでも店の評価は高いが、なかには厳しい意見も書き込まれる。だが「それもお店の進化のためには大切なご意見です。時には私も店頭で接客して、お客様と直接向き合います。年配のお客様が『ケーキは大好きだけど、昔のように食べられなくなった』という声も聞き、病院からのコラボの話と合わさって商品開発の背景になりました」(同)

 田中氏に「現在の千尋さんに点数をつけるとしたら何点ですか」と聞いたところ、返ってきた答えは「まあ50点だね」と辛口だったが、その後に「でも、よく50点になったわ」と話していた。

 厳しめの点数は期待の裏返しなのだろう。次回は「ブランドの進化」と「事業承継」の視点で、同店を分析してみたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。
足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『カフェと日本人』(講談社現代新書)がある。これ以外に『「解」は己の中にあり』(講談社)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)など、著書多数。10月16日に発売された『吉田基準』(日本実業出版社)では取材・構成を担当。
E-Mail:takai.n.k2@gmail.com

『吉田基準』 独自の経営と高品質のものづくりを実現するために、外部の職人さんを含めた「吉田カバンの人々」が、どのような考えにもとづいて、どういったやりかたで仕事をすすめているのか、トップ自ら披露していきます。ものづくりに携わる人だけでなく、仕事の成果や質を高めたいビジネスパーソン必携の一冊です。 amazon_associate_logo.jpg

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