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熟成肉は危険!死に至る恐れ 有害カビで発がん、神経障害も

文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター

熟成肉は危険!死に至る恐れ 有害カビで発がん、神経障害もの画像1「Thinkstock」より
 牛肉をはじめとしたさまざまな食肉で、一定期間寝かせてうまみを凝縮させる「熟成肉」が、ここ数年大ブームとなっています。最近ではファミリーレストランや牛丼チェーン店でも提供されるようになっていますが、熟成肉について全国で統一された定義や手法はなく、それぞれの企業や飲食店が独自に“熟成”させているため、健康被害のリスクを懸念する声が多くあります。

 古来、「どんな肉でも腐る直前が一番おいしい」といわれますが、実際、肉の中の酵素によってタンパク質が分解されて、うまみ成分であるアミノ酸に変化します。

 熟成には、大きく分けてウェットエイジングとドライエイジングという2つの方法があります。

 ウェットエイジングは、真空パックや布などで肉を包み、乾燥を抑えながら摂氏0~2度の低温で半月~1カ月半ほど寝かせます。ファミリーレストランや牛丼チェーンは主にこの製法を用いています。従来、冷凍保存していた肉をこの手法に切り替えて保存している飲食店も増えています。

 一方、ドライエイジングは、摂氏1~3度、湿度60~80%という低温・高湿度の環境で、扇風機などで風を常に動かしながら半月~2カ月ほど寝かせます。アメリカでは、一般的に熟成肉といえば、このドライエイジングによって熟成されています。

 ドライエイジングは、熟成によって肉の表面が乾燥して固くなったり、青カビに覆われたりします。しかし、外気中の菌を寄せつけないため肉は傷むことなく、うまみが増していきます。青カビは非病原性であり、健康な人であれば病気にかかる心配はありません。また、熟成環境が衛生的に保たれていれば、有害な菌も入らないので非常に優秀な保存食となります。

熟成方法によっては食中毒の危険も

 しかし、保存する環境次第では多くの危険を招くことになります。たとえば、ウェットエイジングでは、表面に食中毒菌が付いていれば、熟成期間中に肉の内部にまで菌が侵食する可能性があります。そうなると、表面を焼いても食べた人が食中毒を起こすリスクが高まります。

 また、ドライエイジングでは青カビだけでなく、ほかの有毒なカビが増殖する可能性もあります。カビは感染症、アレルギーを起こす危険があり、吸い込めば過敏性肺炎を発症することもあります。なかには発がん性が懸念されるカビもあります。

 さらに、加工して一枚肉のように見せている成型肉などは、内部まで菌が行き渡る可能性が高く、食中毒のリスクは高いといえるでしょう。こうなると、もはや熟成ではなく「腐敗」です。

 2000年代初頭のBSE騒動や、焼肉店で死者を出した生肉による食中毒事件などをみると、食肉に危険が指摘されると世間に大きな混乱が生じます。それほど現在の日本の食に肉は欠かせないものとなっているのです。

 そして昨今の熟成肉の大ブーム。多くの飲食店がこぞって熟成肉を掲げたメニューを打ち出していますが、ひとたび食中毒が発生しようものなら、途端に「熟成肉を食べてはいけない」との機運が高まり、精肉業界や外食産業に大打撃を与えるでしょう。

 実は従来、経産牛(出産経験のある牛)は固くて食肉には適さないとして加工品などに利用されていましたが、熟成によって柔らかくなることがわかり、最近は食肉用として流通し始めています。食肉用として育てられた牛よりも安いため、経産牛を熟成させて提供する飲食店があるようです。

 経産牛を食べること自体は何も問題ありませんが、熟成肉ブームに乗って稚拙な熟成方法で粗悪な品質の肉を客に提供する悪質な店があると指摘されています。

 食中毒は、菌の種類によっては死を招くこともあります。死に至らないまでも、発熱や激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が長期間にわたって続くことも珍しくありません。カンピロバクター菌による食中毒では、回復した後にギラン・バレー症候群を発症することあります。ギラン・バレー症候群とは、筋肉を動かす運動神経が侵されて手足に力が入らなくなる病気です。通常は3~6カ月で自然に治りますが、約2割は後遺症として歩行困難になるといわれています。

 極端な話、冷蔵庫で数日寝かせておくだけでも「熟成させた」といえなくもありません。それぞれの店舗で、どのように熟成させているのかは違うため、注文する前には確認することをお勧めします。ブームとはいえ、熟成肉の看板に踊らされて健康を害するようなことがないよう、お店と料理は慎重に選びましょう。
(文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター)

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