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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

1枚千円のとんかつがバカ売れ!平田牧場の闘魂経営…豚2頭から三元豚の王者への軌跡

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「当時のダイエーは若いバイヤーの態度も横柄で、商談をする際に『食事を出せ』という。食事を出すと今度は『ビールを出せ』、ビールを出すと『ワインを出せ』と銘柄まで指定してきた。大手取引先だから我慢していたが、月末には赤字伝票を切ってくる。売れば売るほど赤字になった。人として許せなくて取引を断ったのです」(嘉一氏)

 75年当時、同社の売上高の9割を占めたダイエーとの取引を絶って選んだのは、その前年から小規模の取引が始まっていた生活クラブ(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会)だった。だが、結果的にこの方向転換が同社の事業拡大の原動力となった。

 生活クラブは現在、グループ合計で組合員約34万人を擁する大組織だが、当時は5000人程度だった。当時も今も組合員の大部分は女性で、圧倒的に主婦が多く「食の安全・安心」に敏感な人が多い。平田牧場は同生協と二人三脚で無添加の商品づくりを行ってきた。生活クラブは、生産費用の一定額を保証して購入価格に反映する「生産原価保障方式」で同社の取り組みを支えた。

 74年2月、平田牧場が生活クラブと一緒に商品開発する途中で、「無添加ソーセージの腐敗事故」も起きた。無添加ゆえ、腐敗しにくい真冬を選んで配送したが、一部の商品にネト(細菌などの繁殖でベトベトすること)が生じたのだ。だが、これが逆に「余計な添加物を使っていない」と同生協に評価され、以後は必要最小限のソルビン酸(保存料)を入れたソーセージを製造。83年にはソルビン酸をゼロにした完全無添加のソーセージを共同開発し、衛生管理体制も進化させていった。

1枚千円のとんかつがバカ売れ!平田牧場の闘魂経営…豚2頭から三元豚の王者への軌跡の画像4無添加ポークソーセージ

風味を高めるために、豚にコメを食べさせる

 同社のハムやソーセージを製造するのは、グループ会社の平牧工房だ。この会社の生産現場を見学すると、無添加ポークソーセージの製造ラインの脇に真塩や小麦でんぷん、スパイス、平田牧場の豚から抽出したポークエキスなどの副原料が展示されている。原材料の「見せる化」をしているのだ。こうした姿勢も生活クラブに鍛えられた。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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