多くの国でもそうだが、特に韓国の政治家たちは国民に清廉なイメージを持たれていない。政治家の倫理性に対する国民の信頼はあまりにも低く、賄賂を受け取った政治家が起訴される事件など、もはや韓国では驚くほどではなくなっている。
なぜ、韓国ではここまで政治家の倫理性に対する信頼が低いのだろうか。4月13日に行われる予定の韓国第20代国会議員選挙の予備候補者たちの面々を見てみると、その理由が透けて見える。
韓国では、選挙運動期間前から選挙運動を可能にするため、選挙前に予備候補者として登録する制度がある。韓国中央選挙管理委員会のホームページに公開された予備候補者の情報を確認してみると、なんとその中の4割が前科持ちだったことが判明した。具体的な罪名はさまざまで、飲酒運転、暴力、詐欺、横領、窃盗、殺人未遂、名誉毀損、選挙法違反、集会及び示威に関する法律違反(不法デモ)、国家保安法違反などだ。
これらの犯罪の中で、不法デモや国家保安法違反については、倫理性を疑うまでのことではないかもしれない。なぜなら、韓国は80年代まで軍部独裁国家だったため、当時の学生たちがデモ活動を行い、それを理由として逮捕などの処罰を受けた人は少なくないからだ。
しかし、他の罪名を見てみると、このような前科を持つ人物が国会議員になろうとするとは、にわかに信じがたい。特に現与党であるセヌリ党所属のある予備候補者は、なんと殺人未遂で懲役3年の実刑判決を受けていた。
飲酒運転のような軽い犯罪であっても、前科があるとなれば規範意識の薄さが疑われるが、詐欺や横領、殺人未遂といった重大犯罪を行った人物が堂々と国会議員になろうとするとは、かなり衝撃的だ。彼らはいったいどんな顔をして、「国民のために働きます」と宣言しているのか。
国会議員、特に特定地域の国民から選ばれる地方区国会議員は、選挙運動の際には「当選したら、どのように活動して国民の役に立つか」を説明する。当然、国会議員として選出された後は自分を選んでくれた国民の信頼を裏切らず、約束を守る義務がある。だが、人を騙し、裏切り、自分の利益を追求する詐欺や横領といった犯罪を行ってきた過去のある人物の言うことを、国民は信頼できるのだろうか。
ただでさえ「政治家は約束を守らない」という認識が広まっている韓国。今回の国会議員選挙では、予備候補者たちの遵法精神のなさを知ると、彼らが掲げている公約を信じてもいいのか疑問だ。前科を持つ人が国会議員になってはいけないとまではいわないが、せめて過去の過ちに対する説明や反省を国民に表明し、今は信頼に値する人物になっていると思わせることが必要なのではないか。
民主主義国家では、国会議員は国民を代表し、憲法上の主権者である国民の意思を社会に反映させることが仕事だ。倫理観の欠如している人物が、国民の意思を反映させた政治を行うことは期待しにくい。前科があっても平気で政治家になろうとする風潮が蔓延したままでは、政治に対する国民の不信は強まる一方だろう。
(文=キム・ボヨン/韓国弁護士、構成=Legal Edition)
キム・ボヨン(Boyung kim)/韓国弁護士
ソウル大学国語国文学科卒業。漢陽ロースクール修了。2012年第1回韓国弁護士試験合格後、ソウル高等裁判所のロークラーク(調査官)として裁判実務に従事。建築紛争を中心に、一般民事事件を幅広く扱う。14年に韓国弁護士登録(ソウル地方弁護士会)
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