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石原藤樹「その医療の常識、本当ですか?」

ゼロカロリー飲料の人工甘味料、体にさまざまな害の可能性…過食や糖尿病の恐れも

文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長
ゼロカロリー飲料の人工甘味料、体にさまざまな害の可能性…過食や糖尿病の恐れもの画像1「Thinkstock」より

人工甘味料とはどのようなものか?

 ノンカロリーの炭酸飲料が、健康ブームもあって広く飲まれています。たとえば、カロリーゼロを謳ったコーラには、スクラロースやアスパルテームという名前の、いわゆる「人工甘味料」が使用されています。こうした人工甘味料は、基本的にカロリーがないか極めて少なく、それでいて自然な砂糖の甘さに似た「甘味」を感じさせます。

 それでは、通常のコーラの代わりにカロリーゼロのコーラを飲めば、いくら飲んでも血糖値は上昇せず、糖尿病に悪いということもないのでしょうか?

 実はこの問題は未解決なのです。

人工甘味料の歴史

 人工甘味料は、高価な砂糖の代用品として開発されたサッカリンがその始まりで、その後アミノ酸の一種であるアスパルテームやスクラロースなど、多くの「代用砂糖」が開発されました。

 これはそもそも、高価な砂糖の代用品として商品価格を下げる目的で使われたのです。サッカリンといえば、安かろう悪かろうという、どちらかといえば悪いイメージしかなかったのですが、カロリーのないことを逆手に取って、ダイエット目的や健康に良いというイメージで急速に普及することになったのです。

 サッカリンは発がん性の危惧があって、その後開発されたアスパルテームやスクラロースのほうが現在では主に使用されています。普及しているゼロコーラでも、使用されているのはアスパルテームやスクラロースが主です。

人工甘味料の作用と甘味受容体

 人工甘味料はカロリーがないにもかかわらず、甘味を感じさせます。素朴な疑問として、なぜカロリーのない化学物質が甘味を持っているのでしょうか?

 人間が甘味を感じるのは、舌の味蕾にある甘味受容体に、砂糖などが結合するためです。つまり、たとえカロリーがなくても、甘味受容体に結合する物質は人間には「甘い」と感じられるのです。従って、甘味受容体に結合する化学物質が、人工甘味料の正体です。ブドウ糖は甘く感じます。これはブドウ糖も舌の甘味受容体に結合することを意味しています。そして、2009年に群馬大学の小島至先生がネズミの実験において、ブドウ糖の結合する甘味受容体と同様の構造が、インスリンを分泌する膵臓の細胞にもあることを報告しました(参考文献:1)。

 これはどういうことかというと、甘いと感じた物質は膵臓の細胞を刺激してインスリンを分泌する可能性がある、ということです。つまり、人工甘味料も膵臓を刺激する可能性があるのです。

人工甘味料で血糖値は上がるのか?

 前述のように、人工甘味料は膵臓を刺激して、インスリンを分泌させる可能性があります。ただ、その刺激がブドウ糖と同じであれば、血糖値は上昇しないのにインスリンは出るのですから、ゼロコーラをガブガブ飲めば皆低血糖になって倒れてしまうという理屈ですが、実際にはそうしたことはありません。つまり、人工甘味料が膵臓を刺激することは事実としても、それは補助的な作用であって、それほどの影響はないと考えたほうが良さそうです。

 ただ、高インスリン血症に傾くことにより、その後の過食につながったり、インスリン抵抗性から糖尿病の発症に結び付く、という可能性も否定はできません。

 これまでに、明確に人工甘味料が糖尿病の発症に結び付くという信頼のおける疫学データはありません。健康診断の結果をもとにして、通常の清涼飲料水ではそうした影響はなかったのに、人工甘味料を含むダイエット飲料でのみ、その後の糖尿病の発症リスクが増加したという報告があり、報道もされましたが、用量依存性はなく、カロリーのある飲料ではリスクがないなど、にわかには信用できないようなデータです(参考文献:2)。

 2014年9月の英科学誌「ネイチャー」に、サッカリンをネズミに食べさせることにより、腸内細菌叢が変化して血糖値の上昇に結び付いたという結果が報告されています。非常に興味深い報告ですが、サッカリン以外でそうしたことが起こるのかは明らかでなく、血糖値上昇のメカニズムも不明です。そんなわけで人工甘味料は無害ではないと考えられるのですが、それがどのような影響を糖代謝に与えるのかについては、今後の研究を待たないといけないようです(参考文献:3)。

 摂取カロリーを減らすために人工甘味料をうまく利用することは、健康上のメリットがあると思います。しかし、それが甘味受容体に結合する物質である以上、体にいろいろな意味で作用を及ぼす可能性は否定できません。その作用の詳細は現時点では不明の点が多いので、あまりこうした物質に頼りすぎることは、健康に害を及ぼす可能性もあると考えて、取りすぎないような注意は必要であると思います。
(文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長)

【参考文献】
(1)Nakagawa Y, Nagasawa M, Yamada S, et al. Sweet taste receptor expressed in pancreatic beta-cells activates the calcium and cyclic AMP signaling systems and stimulates insulin secretion. PloS One. 2009; 4(4): e5106.
(2)Sakurai M, Nakamura K, Miura K, et al. Sugar-sweetened beverage and diet soda consumption and the 7-year risk for type 2 diabetes mellitus in middle-aged Japanese men. Eur J Nutr. 2014 Jun; 53(4): 1137-8.
(3)Suez J, Korem T, Zeevi D,et al. Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota. Nature. 2014 Oct 9; 514(7521): 181-6.

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

北品川藤クリニック院長。医学博士。1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任
北品川藤クリニック

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