しかし、企業側にも大きなリスクとなると浅野弁護士は指摘する。

「仮に訴訟を起こされ、固定残業代制度が無効と判断された場合や、未払い残業代があると判断された場合には、労働者に対して支払わなければならない残業代が増額される可能性がある」(同)

固定残業代制度=ブラック企業?

 最近では、固定残業代制度を悪用して労働者に支払う残業代を違法に減額しようとしているブラック企業の実態が明らかになってきたことから、同制度を導入しているという事実だけで、ブラック企業であるかのようなイメージを持つ人も増えているようだ。企業側としては、導入を避けたほうが利口な選択といえよう。

 また、厚生労働省より出された指針によって、求人企業に固定残業代制度に関する情報の明示が義務付けられた。これによって、固定残業代制度によって残業代の支払いを不当に逃れようとするブラック企業は、求人段階から排除される扱いになったのだ。こうなると、導入するメリットはなおのこと小さい。

 もはや、存在意義が薄れてきた固定残業代制度。全面的に廃止する方向で検討すべきタイミングが迫ってきているのではないだろうか。
(文=Legal Edition)

【取材協力】
浅野英之(あさの・ひでゆき)弁護士
浅野総合法律事務所 代表弁護士
労働問題・人事労務を専門的に扱う法律事務所勤務を経て、四谷にて現在の浅野総合法律事務所(東京都新宿区)を設立、代表弁護士として活躍中。労働問題を中心に多数の企業の顧問を務めるほか、離婚・交通事故・刑事事件といった個人のお客様のお悩み解決も得意とする。労働事件は、労働者・使用者問わず、労働審判・団体交渉等の解決実績を豊富に有する。

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