「本来、固定資産税・市町村民税法人分・特別土地保有税の3税は市町村の財源になります。ところが23特別区は、これら3税を完全な自主財源にできません。23区には都区財政調整という制度があり、3税はいったん東京都が徴収することになっています。そのうち45パーセントを都が取り、残り55パーセントを23区全体で分配するのです。千代田区の3税総額は3300億円以上ありますが、そのうち千代田区に戻るのはわずかに70億円です」

 千代田区が市になれば、3300億円が自主財源になるのだから大きなプラスといえる。千代田区が市になりたいと考えるのは、当然の成り行きなのだ。

東京都にとっての危機

 一方、東京都にしてみれば、千代田市が実現すれば大幅な税収減になる。都庁職員が「千代田市が実現すれば東京都が弱体化する」と指摘するのも頷ける。千代田区だけが市になるならまだ傷は浅いが、千代田区を皮切りに港区や新宿区、渋谷区などが雪崩を打つように市になれば、東京都は崩壊するだろう。だから、東京都は、絶対に千代田市などという独立構想を許すわけにはいかない。

「石川区長にとって、千代田市構想は悲願ともいえる政策です。だから任期中に実現できなくても道筋はつけておきたいと考えていることでしょう。つまり、小池都知事にとって石川区長は獅子身中の虫。石川区長にとっても、小池都知事は目の上のたんこぶみたいな存在なのです」(前出・千代田区職員)

 今回の千代田区長選で、自民党が推す候補が勝利したら小池都政にとっても大打撃だっただろう。しかし、石川区長が勝利しても手放しで喜ぶことはできない。石川区長が5選を果たしたことで、千代田市構想は実現に一歩近づいたのだ。それは、東京都にとって財源を奪い取られる危機に近づいたということでもある。

 勝っても負けても、小池都知事の眼の前はイバラの道が続く。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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