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渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」

クエン酸の疲労軽減効果、国の研究所が否定…「有効性のデータない」

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト
クエン酸の疲労軽減効果、国の研究所が否定…「有効性のデータない」の画像1「Thinkstock」より

 みかんやレモンなどのかんきつ類に多く含まれるクエン酸は、一般に「疲れをとる」といわれています。そのため、みかんを多く食べるようにしたり、クエン酸を含む飲料を飲んだり、あるいはクエン酸そのものを摂取したりしている人もいるでしょう。

 しかし、本当にクエン酸には疲れをとる効果があるのでしょうか。

 人間の体内では、エネルギーを発生する代謝経路のひとつにクエン酸回路があり、これはクエン酸が重要な役割を果たしています。また、クエン酸は、運動後やストレスなどによって蓄積されていく疲労物質の乳酸を分解するといわれています。

 そのため、「クエン酸を摂ると疲れがとれる」という通説が広まったようです。最近では、「疲労感軽減」をうたったクエン酸入りの機能性表示食品も売り出されています。

クエン酸に疲労回復効果は望めない?

 しかし、 国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」には、このように書かれています。

「(クエン酸は)俗に、『疲労回復に良い』『筋肉や神経の疲労予防によい』『ダイエット効果がある』『痛風に効果がある』などと言われているが、ヒトでの有効性については、信頼できる十分なデータが見当たらない」

 これが事実だとすると、いくらクエン酸を摂っても無駄ということになります。一方で、クエン酸が疲労感を軽減するという研究もあります。そのひとつは、医学専門誌「薬理と治療」(vol.35 no.7)に掲載された「『レモンクエン酸配合飲料』の疲労を感じやすい健常者における抗疲労作用」という文献です。ちなみにこの文献は、ある食品企業が国内および海外の文献テータベースを検索し、見つけ出したものです。

 この研究は、大阪市立大学の研究者を中心としたグループが行ったものです。有償ボランティア男女24名を対象とし、対象者を2つのグループに分けて、それぞれのグループにレモンクエン酸2700mgを配合したレモン果汁飲料100ml(被験食)およびレモンクエン酸を配合していない果汁飲料100ml(プラセボ)を1日1回・8日間飲んでもらい、さらに被験食とプラセボを逆にしてそれぞれのグループに8日間飲んでもらったうえ、疲労感や血液、尿などを調べたというものです。なお、これらはすべてダブルブラインド(二重盲検)で行われました。 

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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