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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

財務省、年金支給開始68歳に引き上げ「検討」報道…引き上げはあり得ると考える理由

文=大江英樹/経済コラムニスト
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 理由のひとつ目は平均寿命が延びてきていることです。現在の公的年金の基本となっている国民年金は、その基礎となる制度が生まれたのが1961年(昭和36年)です。その当時の平均寿命は男性が66.03歳、女性が70.79歳です。したがって60歳から年金の支給が開始された後の余生というのは、せいぜい5~10年ぐらいのものでした。ところが現在では男性は80.98歳、女性だと87.14歳ですから現時点での年金支給開始年齢となっている65歳で考えても16~22年という非常に長い期間になります(2016年 厚生労働省簡易生命表より)。

 一方、他の先進国で見ると、男性の平均寿命でいえば、米国は76.4歳、ドイツは78.18歳、そして英国は79.09歳といずれも日本よりは短いのに対して、年金の支給開始年齢は米・独は67歳、そして英国は68歳ですから、いずれも日本よりは後になっており、年金の支給期間でみると10年前後ということになるため、日本の16年(男性の場合)よりはかなり短いといえます。つまり最も高齢化が進んでいる国が最も早い時期から年金を支給しているわけですから、将来これは是正される可能性はあるといえます。

 2つ目の理由は高齢者の労働人口の増加です。前述のように平均寿命が伸長したということは、元気な高齢者が増えているということです。現時点で65~69歳までの間で働いている人の割合は男性でいえば54.8%、つまり2人に1人以上は働いているのです(17年総務省統計局「労働力調査」より)。企業でも2013年の高年齢者雇用安定法の改正に伴い、定年年齢を引き上げたり、再雇用制度によって65歳までの雇用を確保したりするようになりました。一方、定年後に起業する人も増えており、起業した人の中に占める60歳以上の比率は35%と、すべての年代の中で最も多くなっています(17年版中小企業白書より)。

 この背景は、この15年ぐらいの間で起きた年金支給年齢の繰り下げという理由もあるでしょうから、卵が先かニワトリが先かという議論ともいえますが、むしろ平均寿命が延びたことによって労働力が増えたと考えるべきでしょう。このように考えていくと、1つ目と2つ目の理由及び背景は一致してきます。結論からいえば、「寿命が延びたことで元気に働ける高齢者の割合が増えてきた。であれば働く環境を整備するとともに年金支給開始年齢も将来は見直すことを検討すべきであろう」ということです。

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