
刑務所での生活は暗くて悲惨だけど、実はおもろい――6月12日付記事『逮捕4回、通算服役12年の私が語る「獄中と覚醒剤のリアル」』では、『女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)の著者の中野瑠美さんのお話をお伝えした。
中野さんは、失恋のショックから覚醒剤に手を出し、逮捕4回、通算服役12年という経歴を持つ。今回は、気になる刑務所内の食事や上下関係の実態について聞いた。
刑務所内の「芸能人」とは
――同じ施設には、有名な事件を起こした受刑者もいたそうですね。
中野瑠美さん(以下、中野) 私のいた施設では有名な事件の収容者を「芸能人」と呼んでいましたが、たぶんどの施設も同じだと思います。要するに、「何かあったらメディアが騒ぐ」という意味なんでしょう。
官(施設関係者のこと)はとにかく「事なかれ主義」なので、トラブルは避けたいんです。だから、自殺と脱走は特にタブーですね。でも、自殺はたまにあります。私もイジメで死にたくなったことがあります。
私が和歌山刑務所にいたときには、大手カルト教団の教祖の奥さんが収容されていました。ベジタリアンで、毎日大きな声で「修行」するのでみんな知っていましたが、こういう「芸能人」はイジメや事故防止のために独房に隔離されるので、まず見かけることはありません。刑務作業も同じ工場にはなりません。
でも、なぜか整形して逃亡していた福田和子さんは普通に工場に出ていました。なかなかの「姐御」っぷりでしたが、ある朝、隣の房で亡くなっていて、大騒ぎになりました。くも膜下出血だったと聞いています。

――女子刑務所は、殺人事件と覚醒剤事件の受刑者が一緒になるのですか?
中野 はい。実は、獄中にいる女性の数は男性の10分の1くらいしかいなくて、施設も少ないので、人殺しから万引き犯までみんな一緒です。人数が多いので、男子刑務所はロング刑(懲役10年以上)とションベン刑(懲役2年以下)、初犯と何回か逮捕されている累犯などに分けられているんです。
――そんなに男女の収容者の数は違うんですね。一時問題になっていた定員オーバーは、だいぶ緩和されたと聞いています。
中野 ちょっと前まで、男子は「独居房に2人」というケースもあったようですが、今はそうでもないみたいですね。ただ、高齢化は進んでいて、イジメの問題もありますね。
――イジメは深刻らしいですね。女性刑務官は3年で4割が辞めているそうですが、やはり激務なのでしょうか。
中野 刑務官同士のイジメが最大の(離職の)理由だと思いますよ。ひどいもんでした。詳しくは本書を読んでください(笑)。
新入りは「ドベ」…刑務所内の上下関係
――『女子刑務所ライフ!』には、留置場と拘置所、刑務所の違いなども書かれていて興味深いです。
中野 はい。普通の方は知りませんよね(苦笑)。ざっくりいうと、起訴される前にとりあえず収容されるのが警察署の留置場で、起訴後は拘置所、刑が確定すると刑務所となります。
これらの施設は細かい規則がバラバラで、同じ施設でも署長や所長が代わると変更されることがあるのですが、大まかには法律で決められています。刑が確定するまでは自由度が高く、私服で過ごすことができ、お金があれば差し入れ屋さんからお菓子やお弁当、雑誌などを買えます。お花も売っているんですよ。
また、面会と手紙は毎日OKで、相手も制限されません。もちろん手紙は手書きなのですが、シャバだけでなく同じ施設内で生活している人にも送ることができます。内容もほとんどチェックされません。刑務作業もありませんし、一日中、部屋の人と大笑いしながら話もできます。イジメに遭わない限りは楽しく過ごせる場所です。
『女子刑務所ライフ!』 覚醒剤で逮捕4回、通算服役12年。あの強盗殺人犯も、某カルト教祖の妻も、放火魔も、みんな同じ塀の中! いじめ、介護、出産、同性愛……獄中のリアルを全部ぶっちゃけます。100人でシャワーを奪い合い、刑務官の派閥争いに巻き込まれ、運動会では大乱闘……! シャブ地獄から生還した元女囚が綴る、“懲りない女たち”の修羅場。
