「第5次エネルギー基本計画」が7月3日に閣議決定された。エネルギー基本計画の改定は、2014年以来4年ぶり。2030年あるいは2050年を見据えた中長期的なエネルギー政策の方向性を示すものとされているが、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「でたらめすぎて、国の基本計画と呼ぶのが恥ずかしい」と厳しい評価を下す。
まず、2030年の電源構成(エネルギーミックス)の数値目標だが、再生可能エネルギー(再エネ)が22~24%、原発は20~22%となっており、この数字は前回と同じだ。その理由として、世耕弘成経済産業大臣は「大きな技術的な変化があったとは思えず、大枠を変える段階にはない」と説明している。これに対して飯田氏はこう語る。
「この4年間で世界のエネルギーを取り巻く環境は劇的に変わった。日本では原発メーカーの東芝がほとんど倒産状態だ。あの保守的なIEA(国際エネルギー機関)でさえ、ほとんどの国で太陽光と風力が化石燃料より優位に立つと言っている。これからの主力は太陽光と風力と蓄電池であると。すさまじい勢いでエネルギー転換と構造転換が起きている。経産省や安倍政権はそういう現実がまったく見えていないし、無視している」
世界のビジネスの動きは速く、投資や技術開発は、再エネや電気自動車(EV)、IoT(モノのインターネット)による送電や電力制御、蓄電池などの分野に集中し、巨大な市場が生まれている。日本では2016年4月に電力小売り全面自由化という大きな制度変更があったが、世耕大臣はこれをも無視している。電源構成の数値目標について、飯田氏はこう批判する。
「あの数字は“相場観”で出したにすぎない。4年前はまだ原発を前面には出したくなかったため、ベースロード電源という言葉でくるんで出してきた。原子力ムラには再稼動を鼓舞する一方で、国民の反発をかわすために、原発より少しだけ多めの22~24%という数字で再エネを位置づけた。原発の隠れ蓑として出てきた数字だ。これをあまり増やすと、今度は原子力ムラが反発する」
では、原発の20~22%を達成するには、どのくらいの原発を稼動させる必要があるのか。
「目標を達成するには30基必要だとされている。再稼動が難しいうえに、すでに廃炉が決まっているものもあり、日本の原発の稼働率が70%程度であることを考えると、新増設しないと達成は無理。しかし、そんなことも真剣に考えても仕方がない。相場観で出した数字だから」
比率22~24%で再エネは「主力電源」なのか
今回の基本計画で、再エネは「主力電源化を目指す」とされているが、飯田氏は「主力電源の内容が意味不明で羊頭狗肉」だと言う。
「再エネの内訳を見ると、太陽光発電が7%とあるが、この数字は今年中に達成してしまう。2030年の目標でもなんでもない。これ1つ見ても、彼らは真面目にやっていない。安倍政権や経産省、原子力ムラの本当の狙いは原発の再稼働であり、新増設・リプレイスなのだろう。しかし、大々的に打ち出せないのと、世界の再エネの趨勢は無視できず、主力電源化という言葉だけを枕詞で入れた」