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江川紹子の「事件ウオッチ」第112回

「新潮45」LGBT差別…江川紹子が指摘、休刊だけですまされない問題の本質

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特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を掲載した月刊誌『新潮45』10月号

 杉田水脈衆議院議員が、性的少数者LGBTの人々を「生産性がない」などと書いた文章を掲載した、新潮社の月刊誌「新潮45」(新潮社)が、同議員を擁護する特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」(同10月号)で、さらなる批判を浴びている。同社社内からも、同誌に否定的な声が発せられ、同社の佐藤隆信社長が、「ある部分に関しては、あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられました」との見解を発表した。

自分では釈明しない杉田氏

 ただ、同社はこの見解は「謝罪ではない」としており、その内容は曖昧。会社として、この問題にどう対応するつもりなのかも、まったく見えてこない。これをきっかけに、どうしてこのような事態を招いてしまったのか検証し、是正する具体的な動きをするのか、それとも一時しのぎの声明で事態の沈静化を待つつもりなのか、今後の対応が注視される。

 一連の出来事を、

1)杉田氏や10月号に寄稿した小川榮太郎氏など、問題とされる文章を書いた者の問題

2)それを掲載した編集部の問題

 に分けて考えてみたい。本当は、杉田氏を擁護する安倍晋三総裁を含めた自民党の問題も考える必要があるだろうが、話が長くなりすぎそうなので、今回は上記2点に絞る。

 問題となった今年8月号の杉田氏の寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」には、少なくとも次の3つの問題がある。

・LGBTのうちLGB(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル)を性的「嗜好」、すなわち「趣味」「好み」の話であるとし、女子校での先輩への「疑似恋愛」などと一緒くたにしているなど、読者に誤った情報を提供した。

・LGBTの人たちが、多額な税金を投入しなければならない施策を要求しているわけでもなく、実際に多額の金額が使われているわけでもないのに、あたかもLGBT支援に多額の金がかかっているような錯誤を読者に与えた。

 尾辻かな子衆院議員が、各省庁に問い合わせをしたところ、LGBT関連での税金支出はほとんどなく、具体的な金額が提示されたのは人権擁護局を抱える法務省のみだった、という。

 そこで法務省の平成29年度予算を見ると、「LGBT(性的少数者)の人権問題対策の推進」として計上されているのは1,300万円。法務省予算の0.017%、国の一般会計予算の0.00001%である。また、地方自治体では、札幌市や世田谷区で200万円。渋谷区は男女共同参画と合わせて1300万円だが、それでも予算総額の0.01%にすぎない。

 これを「支援の度が過ぎる」とは、「非難の度が過ぎる」だろう。

・LGBTのカップルについて「子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」「そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」などと述べ、子供を産まない人達に差別的な評価をし、支援に否定的な主張をした。

 この論法だと、重度障害者やシングルのまま年齢を重ねた高齢者なども、生産性がないとして、政治から切り捨てられかねない。相模原市の津久井やまゆり園で19人を殺害した男の「重度の障害者は安楽死させた方がいい」という優先思想を想起して、ぞっとした人も少なくないだろう。しかも杉田氏は、全国民の代表者であるの国会議員だ。その議員までもがこうした発想でいるのかと、LGBT当事者以外にも、多くの衝撃を与えた。

 自民党は当初、「寄稿文は議員個人としてのもの」としてやりすごすつもりだったようだが、批判が高まる中、「個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、本人には今後、十分に注意するよう指導した」と発表した。

 しかし、その後も杉田氏から謝罪や釈明はなく、ブログやツイッターなどでも「自分はゲイだと名乗る人間から事務所のメールに『お前を殺してやる!絶対に殺してやる!』と殺人予告があった」とするツイートをした後、LGBTに関する投稿を削除し、本人はだんまりを続けている。

 問題について、自分の口できちんと説明しない。今の政界では、これが一種の流行りなのかもしれないが、政治家としてはこれはダメである。杉田氏の本稿に関する4点目の問題点として、ここは指摘しておきたい。

屁理屈や無知と偏見に満ちた“反論”

 彼女が語らない代わりに、ということなのか、「新潮45」10月号では立場の異なる7人が、こぞって杉田氏を擁護している。

 藤岡信勝・「新しい歴史教科書をつくる会」副会長は、マルクスがその著述の中で「生殖行為を『他人の生命』の『生産』と記述していた」とか、「社会科学の理論では人間の『生産』『再生産』などの言葉が分析概念として普通に使われている」等々と書いて、杉田批判を非難しているが、これは屁理屈としか言いようがない。杉田氏はマルキストではないし、彼女が同誌に書いた文書は社会科学の学術論文でもない。

 LGBT当事者として登場したゲイのかずと氏は、杉田氏の文章を問題視するツイートで議論に火を付けた、尾辻かな子衆議院議員を「同性愛者の恥さらし」などと罵倒。杉田氏の寄稿で多くの人が傷ついたのは、話し合いの場も持たずに「ツイッターで一方的に批判した」のが原因と、トンチンカンな非難をしている。

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