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小笠原泰「日本は大丈夫か」

日産ゴーン逮捕、東京地検特捜部の勝算は怪しい…人権無視の検察制度が世界に晒される

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授、フランス・トゥールーズ第一大学客員教授
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 実際、推定無罪が社会的に機能しないことには大きな問題がある。小沢一郎氏の例をみればわかるように、検察は小沢氏を無理やり有罪にしようとしても無罪となったが、逮捕された時点で悪徳政治家、犯罪者と見なされ、社会的には抹殺され、政治家生命は絶たれたといえる。つまり日本社会では、起訴された時点で有罪無罪にかかわらず推定犯罪者として社会的な制裁を受け、その後有罪になると法律に則った刑罰を受けるという二重の制裁を受ける。そして、もし有罪にならなくても推定犯罪者としての社会的制裁を受け続ける。これでは人権を擁護する近代法が浸透した社会とは到底いえない。

 加えて、すでに指摘されていることであるが、高い有罪率を維持するために、起訴した件は何がなんでも有罪にするという意識が検察官には働くので、えん罪が増えるというリスクが高くなる。その顕著な例が、前述の村木元局長の立件にかかわる特捜部による証拠改竄である。読者諸兄は、個人の観点からこのような社会を望むであろうか。

 戦後、国民感情という名のもとに情緒的になる傾向を強めた国民に、推定無罪の重要性を教えてこなかった国の責任は重い。そして、推定無罪が機能しない社会であることを世界に知らしめるのは、果たして日本のためになるであろうか。人権が守られない国に、海外から経営者や社員として人が来るのであろうか。人材流出が加速するリスクもあり、企業の世界的な競争力を失うことにつながる。この結果は、国民として覚悟する必要がある。

検察は墓穴を掘る可能性

 すでにフランスの駐日大使がゴーン氏に面会して、領事保護を受ける権利があると述べている。フランスをはじめ、先進国では、取り調べに弁護士が同席するのは当たり前で、それができないのは日本ぐらいである。日本人であれば密室で圧迫して罪を認める供述をとることも可能だが、今回はそれが通じるのであろうか。ゴーン氏とケリー氏は、現在容疑を否認していると報じられており、取り調べは進まないのではないか。この取り調べに弁護士が同席を許さないことについては、2013年のジュネーブでの国連拷問禁止委員会でも問題視されている。

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