ここ数年、「働けなくなるリスク」をカバーする就業不能保険の新商品ラッシュが続いている。就業不能保険とは、病気やケガなどで働くことが困難になった場合、所定の給付金が支払われる保険である。「所得補償保険」「給与サポート保険」「お給料保険」など、名称や細かな保障内容はさまざまだが、すべて「働けなくなるリスク」をカバーするという基本的なしくみは同じだ。
「人生100歳時代」というキーワードだけが先走りしている印象が否めないものの、政府が推進する社会保障改革でも、継続雇用を65歳以上に延長し、年金の受給開始年齢の選択範囲を70歳超とする案が検討されている今、病気で亡くなるより恐ろしいのは、働けないのに予想以上に長生きしてしまうこと。いわば、“おめでたい”はずの長生きがリスクとなってしまうわけだ。
もちろん、年金受給世代以上に働けなくなるリスクに備えるべきは働き盛りの現役世代である。そこで今回は、最近注目の働けなくなるリスクについて、多くの人が気づいていない本当の恐ろしさをお伝えしよう。
7割以上の人が働けなくなったときの経済的不安を抱えている
生命保険文化センターの「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主が就業不能状態になった場合の必要生活資金に対する不安感を尋ねたところ、「不安」と回答した人が72.7%(「少し不安である」<33.2%>+「非常に不安である」<39.4%>)にのぼる。
7割以上の人が経済的不安を抱えているわけだが、実は前回調査に比べて不安に感じている人の割合はやや減少傾向にある(平成27年調査78.8%)。筆者の個人的見解では、共働きファミリーが増え、世帯主が働けなくなっても稼ぎ手がもう1人いることで、リスクが分散されたためではないかと考えている。とはいえ、多くの人が働けなくなった場合の経済的な問題を不安に感じていることに変わりはない。
働けなくなった原因の8割は病気によるもの
では、どうして働けなくなるのか? 病気やケガ、リストラ、失業、勤務先の倒産など、さまざまな内的・外的原因が考えられるが、内的要因で多いのは病気によるものだ。
朝日生命が健康上の理由により永続的に働けない20~69歳を対象に行ったインターネット調査(平成28年3月)によると、永続的に働けなくなった原因の8割は病気である。そのうちメンタル疾患によるものが36%、生活習慣病によるものが26%と、前者の割合が多い。そして働けなくなった原因の発生年齢は、20~40代が約6割を占める。まさに働き盛り世代である。