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『いだてん』早くも視聴率1桁転落寸前…独特なクドカンワールドが視聴者をふるい落とす

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『いだてん~東京オリムピック噺~』公式サイトより

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第5話が3日に放送され、平均視聴率は前回から1.4ポイント減の10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。決しておもしろくないわけではないし、「いい作品だ」と評価する声も少なくないが、大河ドラマの従来の視聴者層にとっては、いろいろな面で「わかりにくい」作品であることが数字に表れているといえよう。

 さて、第5話は、後に日本人初のオリンピック選手となる金栗四三(中村勘九郎)がオリンピック予選会のマラソンに出場し、世界新記録を出して優勝したエピソードを描いた。

 オリンピック予選会は第1話でも描かれたが、この時は日本からオリンピックに選手を派遣しようと奮闘する嘉納治五郎(役所広司)の視点で話が進んだ。そのため、主人公であるはずの金栗はまったく登場せず、最後の最後にトップランナーとして競技場に姿を現すという劇的な構成となっていた。第5話では視点を移動し、その時、金栗にどんなことが起きていたのかが描かれた。

 出場していたランナーの一人が空腹のあまり店の商品を盗み食いしたり、トップを走っていたランナーが立ち止まり、追走する金栗を黙ってにらみつけたりと、特にオチのないヘンテコなエピソードも挿入された。だが、ドラマ公式Twitterによれば、これらは記録されている史実なのだとか。まあ、現実の出来事にうまいオチが毎回ついているなんて、そうそうあるはずもない。「なんだかわからない、変な出来事があった」というのを、ある程度忠実に描くことで、リアルさが醸し出されている。

 全体的なマラソンの様子は、美濃部孝蔵(森山未來)の実況でテレビ中継風に描く演出がとられた。お堅いイメージのある大河ドラマとしては挑戦的な手法だが、ともすれば絵的に単調になりがちなマラソンを描くためには、視聴者に対して親切なやり方だったといえる。マラソンをあまり引っ張らず、視聴者が飽きる前にテンポよく終わらせた構成もよかった。

 現在のところ、一番の謎である「古今亭志ん生(ビートたけし)が金栗四三について語るのはなぜか」という問題についても、第5話で少し明らかになった。志ん生は、この時のマラソンの様子を車夫の清(峯田和伸)から直接聞いたのだという。清は勝手に予選会にまぎれ込んでマラソンに出場していたのだ。

 志ん生自身はその日、マラソンに出場する清に頼まれて代わりに人力車を引いていた。そこに客として現れたのが、名人落語家の柳家圓喬(松尾スズキ)。かつて圓喬の落語を聞いてすっかりとりこになっていた志ん生(この時はまだ美濃部孝蔵)は、「弟子にしてください」と圓喬に頭を下げたのだった。後に日本人初のオリンピック選手になる金栗の輝かしい第一歩と、後に大名人と称される志ん生の第一歩は重なっていたというわけだ。この日マラソン大会がなければ、孝蔵が圓喬と出会うことはなく、落語家になることもなかったかもしれない。

 一見すると、なんのゆかりもなさそうな、そして実際になんの縁もない金栗と志ん生をどう結び付けるのかは、このドラマの注目ポイントのひとつであった。「宮藤官九郎のことだから、トリッキーな手を使うのではないか」といった予想もなされていた。だが、人生の転機は案外「あの日たまたまあの場所に行ったから」という偶然の縁によるものが多かったりする。クドカンが選んだのも、そんな「ギリギリありそう」な縁だった。設定に無理がなく、それでいて「志ん生が金栗について語る理由」と「志ん生が落語家になったいきさつ」を同時に解決する脚本は見事というほかない。

 その半面、視聴者をさらにふるい落としてきているように感じる。それを強く感じたのは、ゴールしてフラフラになった金栗が差し出された水に口をつけようとせず、志ん生の「世界記録がまた夢になるといけねえ」でサゲた場面。筆者は大笑いしたが、落語の「芝浜」をきちんと聞いたことがない人にはさっぱり意味がわからなかったはず。「芝浜」のネタ振りは第4話から続いており、回をまたいでオチをつけるという高度な構成になっていたのだが、いかんせん元ネタがわからなければおもしろくもなんともない。

 とはいえ、宮藤官九郎はかつて、落語を題材としたドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系、2005年)を手掛け、落語人気を高めたという実績もある。今回の大河ドラマを見て「落語がわかればもっと楽しいのでは」と落語に興味を持つ人が増えた――なんていう社会現象が起きたらすごい。まったくあり得ない話でもないと思うが、果たして『いだてん』はそこまで視聴者に支持されるだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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