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尿検査で屈辱感を抱く選手も…競泳藤森選手だけじゃない、厳しすぎるドーピング検査の功罪

文=美山和也
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東京五輪“ホスト国”のメンツ

 2018年1月にも、禁止薬物を巡る事件が国内で起きている。カヌーの日本代表候補だった鈴木康大選手が、同じく日本代表候補である小松正治選手の飲み物に禁止薬物を混入させていたことが発覚したのだ。東京五輪出場を確実にするため、ライバルを陥れようとしたのである。最後は鈴木選手が自ら罪を告白したことがせめてもの救いだが、日本オリンピック委員会、加盟各競技団体は、東京五輪の「ホスト国のメンツ」に懸けて、これ以上の薬物違反者は出さないよう再三の注意を払っている。各競技団体とも講習会を開いてきたし、先のメチルエフェドリンのように、「無意識のうちに摂取しかねない禁止薬物が市販薬に含まれていること」の説明もして、その確認・相談の窓口も設置した。

「日本人の気質でしょうかね。クスリに対する強い抵抗感もあって、どの選手もマジメに取り組んでいました」(前出・同)

 そんなときに飛び込んできたのが、冒頭で挙げた競泳・藤森の陽性反応だった。藤森の母校である日本体育大学・同大学院の関係者がこう語る。

「藤森の性格はマジメ。お父さんは田島寧子らを育てた競泳のコーチで、現在も指導を続けています。親子で東京五輪出場とメダル獲得を目指して頑張ってきました。薬物に手を染めるようなことは絶対にないと思う」

 日本水連は、会見というかたちで藤森の陽性反応を発表した。自ら公表したということは、「やましいことはない。無意識のうちに摂取してしまったのだ」と“潔白”を訴える意味もあったのだろう。しかし、そのときに思わず飛び出てしまったのが、冒頭に挙げた「手の打ちようがない」という日本水連幹部の言葉であった。同幹部は再発防止にいっそう力を注ぐとも語ってはいるが、「指導は徹底している。今後、どこに気をつけたらいいのか」ともこぼしていた。

「リオ五輪前、ロシアによる組織的な隠蔽疑惑をWADAは立証できず、一部選手に出場停止を言い渡すだけでした。近年では、体内に薬物の痕跡が残らず、すぐに消えるものもあるそうです。もはや、取り締まる側と不正をする者とののイタチゴッコですよね」(特派記者)

 水泳の藤森は、より厳しくなった検査の犠牲になったともいえなくはないだろう。無意識による摂取の訴えをあきらめてしまった古賀のような例もある。第二、第三の藤森が現れないという保証は、どこにもないのだ。
(文=美山和也)

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