日本列島に甚大な被害をもたらした台風19号。自衛隊の救援作業をめぐり、神奈川県の対応が物議を醸している。
「台風19号の影響で断水した神奈川県山北町への自衛隊の給水支援に県が待ったをかけ、水が捨てられた」と報道されたことが発端で、同県知事の謝罪までに発展している。ところが自衛隊側は、報道と県の説明に対して反論。県の災害に関する認識不足が露呈し始めた。
各社報道によると、台風の影響で断水が発生していた山北町は12日、直接自衛隊に救援要請の可能性を伝え、翌13日朝に同町へ給水支援に来た自衛隊部隊(静岡県御殿場市の駒門駐屯地所属)に対し、県がマニュアルを盾に難色を示したという。ここでいうマニュアルとは、「市町村から要請を受けた都道府県知事が自衛隊に災害派遣を要請する」という各種手順のことで、県は自前の給水車を手配していることなどを理由に自衛隊の給水活動を断念させた。その後、給水車の水は捨てられたと報じられている。
水は捨てていないし自主派遣と認識
これに対して、防衛省統合幕僚監部の報道担当者は次のように否定する。
「水を現場で捨てたという事実はありません。そのまま給水車で持ち帰りました。また現場の指揮官が県の対応に激怒したという報道もありますが、事実と異なります。部隊は粛々と任務を遂行しました。
そもそも今回の給水車の派遣は、町からの緊急要請を受けた自衛隊の自主派遣にあたると認識しています。我々は要望があればいつでも対応ができる体制を整えています。結果として給水車をめぐって県と町の間で連絡の齟齬があり、その結果、給水活動ができませんでした。しかし、市町村の要望があれば自主派遣はできます」
自衛隊の災害派遣には、都道府県知事の要請による「一般派遣」と、緊急性を考慮して部隊を被災地に派遣する「自主派遣」の2つがある。自衛隊ホームページは自主派遣について次のように説明している。
「市町村長から通知を受けた防衛大臣またはその指定する者は、災害の状況に照らし特に緊急を要し、(都道府県知事からの)要請を待つ余裕がないと認められるときは、部隊などを派遣することができます。
防衛大臣またはその指定する者は、特に緊急を要し、要請を待ついとまがないと認められるときは、要請がなくても、例外的に部隊などを派遣することができます。
この自主派遣をより実効性のあるものとするため、平成7年には防災業務計画を修正し、部隊等の長が自主派遣をする基準を定めました」